佐野市のブランドキャラクター「さのまる」は今月下旬、誕生15周年を迎える。日本一に輝いた2013年の「ゆるキャラグランプリ」以降、地域ブランド発信のけん引役として活躍の場を広げた。

 一方で近年、ゆるキャラのブームは陰りを見せる。岐路に立つ今、さのまるには市民と触れ合う機会を重ねてもらい、シビックプライド(地元への誇り)の醸成という役割により努めてほしい。

 平成期は「地方創生の救世主」ともてはやされ、日本列島を席巻したゆるキャラ。経済効果も大きいとして、自治体や企業がこぞって参入した。しかし人気を支える中心的存在だったグランプリは各自治体の「組織票」が問題視されるなどして、20年の10回大会で幕を閉じた。

 こうした中、さのまるはブームの波に流されず「市のシンボル」として定着したと言える。広報戦略について、市広報ブランド推進課の担当者は「目先の費用対効果だけにとらわれず、国内外に派遣して認知度の向上に力を入れた」と説明する。

 ゆるキャラは苦難の時に、真価を発揮することもある。トップレベルの認知度を誇る熊本県のPRキャラクター「くまモン」は16年、熊本地震の避難所や保育施設を回って被災者を励まし、復興のシンボルマークにも使われた。さのまるも19年の台風19号の際、復興をPRするTシャツを着た動画を公開し、愛くるしい姿で被災者を勇気づけた。

 ただし、現状に満足していては他の失速したキャラと同様の結末をたどる恐れもある。誕生15年を節目に、新たな取り組みも必要ではないか。

 背景には待ったなしの地域課題がある。少子化などに伴う人口減が加速する中、各自治体は移住・定住促進策や子育て支援の手厚さで競い合っている。だが、いずれも手探り状態で最善の解決策を見いだせないでいる。

 だからこそ、市民に寄り添うキャラクターとして、さのまるが果たせる役割もあるだろう。市外でのPR活動を継続しつつ、市民との交流に一層力を入れることが重要だ。郷土への愛着という「見えないインフラ」でも、人口減少社会などに風穴を開ける一つの要素になるかもしれない。保育施設や小学校に積極的に出向き、次代を担う子どもたちとの絆を育み、地域課題の解決につなげてほしい。