前回はボツリヌス菌食中毒を取り上げましたが、乳児ボツリヌス症も重大ですのでご説明しましょう。

 おさらいですが、ボツリヌス菌は土壌や海や川の土砂の中に生息しています。菌の増殖に良い条件がそろうと、いきなり食品の中などで増殖を始め、それを食べた人に深刻な食中毒を起こすのです。

 乳児ボツリヌス症は、1歳未満の乳児がボツリヌス菌の芽胞を口からとることで、ボツリヌス菌が乳児の腸内で増殖し、毒素を産生して発症します。乳児がはちみつを加えた離乳食を食べたことで乳児ボツリヌス症を発症、死亡した例もあります。

 

 便秘が続き、まぶたがさがり、元気がなくなり、ミルクを飲む力も弱くなります。ハイハイや寝返りができなくなり、人工呼吸器が必要となることもあります。「1歳未満の子どもにはちみつを与えない」が大事です。乳児は腸内細菌の腸内フローラが未成熟であるため、ボツリヌス菌芽胞の発芽や増殖を許してしまうためとされます。

 しかし、はちみつを摂取していない乳児ボツリヌス症の発症事例もあり、はちみつが全てではありません。冷蔵されていない要冷蔵食品なども要注意です。冷蔵保存が必要な真空パック食品は120度4分以上の加熱を加えておらず、食品内でボツリヌス菌芽胞が残存している可能性があります。必ず冷蔵保存して、期限内にいただきましょう。

 乳児への離乳食は、特にご注意ください。120度で4分以上加熱・加圧処理されているレトルトパウチ食品は、常温での保存が可能です。

 乳児ボツリヌス症は腸内で菌が増えていますから、便からボツリヌス菌が排出され、回復しても数カ月は続きます。おむつを交換する時は手洗い励行です。

 1歳以上の子どもや成人でも乳児ボツリヌス症と同様の成人腸管定着ボツリヌス症もまれにありますが、消化管の機能異常や抗菌薬を使った悪影響で起こります。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。