『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』より((c)創通・サンライズ)

 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』メインビジュアル((c)創通・サンライズ)

 笠井圭介プロデューサー=2026年1月31日、東京都新宿区で撮影

 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』より((c)創通・サンライズ)  『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』メインビジュアル((c)創通・サンライズ)  笠井圭介プロデューサー=2026年1月31日、東京都新宿区で撮影

 ヒット中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』。前作から約5年ぶりの公開となり、リアリティーあふれる映像がファンを喜ばせている。バンダイナムコフィルムワークスの笠井圭介プロデューサーに、制作の裏側を聞いた。(取材・文 共同通信=高坂真喜子)

【機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女】

 『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野由悠季監督の書き下ろし小説を、全3部作で映画化する『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の第2章。2021年公開の第1章では、ハードな戦闘描写と、キャラクターたちの繊細な会話劇や心理描写が話題を呼んだ。

(1)『トップガン』のように

▼記者 原作小説を読みどう感じましたか。

●笠井 アニメに興味を持つようになったが小説は読まない自分が、学生時代に友人からの勧めで読んだ小説が『閃光のハサウェイ』でした。アニメでしか知らなかったガンダムを小説で読むのは不思議な感覚でしたが、他作品には無い熱量を感じました。アニメ制作会社「サンライズ」(当時)の入社試験を受けた際に、「入社したらどんなアニメを作りたいですか」という質問に、『閃光のハサウェイ』と書いてしまうくらいに、自分にとって重要な作品です。

▼記者 制作の中で難しさはありましたか?

●笠井 村瀬修功監督の目指すリアリティーをどこまで映像に落とし込めるかということに難しさを感じました。また、第2章は原作小説的にも特に映像化した際のドラマの作り方が難しかったと思います。村瀬監督もそのあたりはかなり苦労されたと思います。

▼記者 戦闘シーンの臨場感は圧倒的です。

●笠井 村瀬監督から上がってきたコンテは、かなりのボリュームがありました。映像にするのが大変そうでしたが、最初見た時に『トップガン』のような雰囲気を感じましたし、監督にはドッグファイト(至近距離での空中戦)をかっこよく見せるというビジョンがあったんだろうなと思います。

(2)光にこだわり画面設計

▼記者 映像にはCGが使われていましたが、3DCGのチームは何人くらいいるのでしょうか。

●笠井 全体で150人くらいはいると思います。優秀なスタッフが協力してくれたおかげで完成しました。手描きのアニメーションにしてあるカットにも、下地としてCGを使っているものが多く、ほぼ全てのカットにCG工程が存在します。監督が特にこだわる、リアリティーのあるカメラのレンズ感や細かなライティングをアニメで実現するために、作画作業前にCGで画面設計をしました。最近は他のアニメもそういう技法を使っていると思いますが、光のこだわり方について、本作は一線を画すと思います。

▼記者 背景もとてもきれいでした。

●笠井 今回かなり力を入れました。さまざまな作品で美術監督を担当するような腕利きの方々がたくさん集まってくれました。背景だけでもずっと見ていられるような、きれいで“フォトリアル”な画面を設計して作りました。

▼記者 声優さんの演技はどうでしたか。

●笠井 収録するのは久しぶりでしたが、本編の中では数日しかたっていないという状況で、前作に合わせてチューニングして演じていただいたので、改めてプロの技術に感心しました。今作で精神的に不安定なハサウェイのモヤモヤしている感じの演技は難しかったと思いますが、小野賢章さんの演技力の高さを感じました。

 ヒロインのギギは、第1章よりも落ち着いている印象でした。前作ではハイテンションになったり、ローテンションになったり、感情の起伏の激しい子供っぽさを感じさせた印象ですが、今作では目的に向かって進んでいく、しっかりした女性という印象を受けました。上田麗奈さんの表現はギギそのものだったように思います。

(3)手描き表現も「サンライズっぽく」

▼記者 原作小説は分量がありますが、108分にまとめられています。

●笠井 本当は90分くらいを目指していたのですが、内容的にこれ以上省くことができませんでした。村瀬監督は富野監督を限りなくリスペクトした形でフィルムにしようと考えていたと思います。その原作小説の持っているニュアンスを、さまざまな方法で伝えられるように、シナリオや絵コンテも手がけていただいたと思います。

▼記者 こだわったシーン、注目してほしいシーンは?

●笠井 たくさんありますが、ギギとハサウェイが「Ξ(クスィー)ガンダム」の手のひらの上で会う場面は、特にこだわりました。ずっと髪の毛がなびいている上、微妙な表情を表現しないといけない。手のひらの上という、高度が高い場所の状況を表現するのがそもそも難しい。できるだけ雰囲気をリアルにしようとしたので、さらに難しかったですが、結果的にすごく良いシーンになりました。

 注目してほしいシーンで言うと、後半、急にモビルスーツがCGではなく作画になるところがあります。ずっとモビルスーツがCGでアクションしているのに、急に手描きアニメの表現になるので、「サンライズっぽいな」と思っていただけるかなと思います。また、ハサウェイが過去を回想するシーン、爆発は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』での爆発を限りなく再現するようにとの指示があったので、色やフォルムを再現しました。

(4)村瀬監督はロマンチック

▼記者 前回に続き、アムロが登場しました。

●笠井 回想シーンやイメージ空間の中など、さまざまな形で登場しました。ハサウェイの中にある憧れを引きずっている大きな存在としてアムロがいるから、そういうふうに描写されたのだと思います。

▼記者 印象的な、ハサウェイとギギのキスシーンは、原作小説にはありませんでしたね。

●笠井 村瀬監督がこのシーンを入れることで、ドラマとして盛り上げてくれたのだと思います。さすがに僕も恥ずかしくて、「村瀬監督、なんでキスさせたんですか?」とは聞けないですが、村瀬監督がロマンチックな男だったということでいいんじゃないでしょうか。(笑)

▼記者 前作から5年ぶりの公開になりました。

●笠井 今作は舞台が転々と変わるロードムービーになっています。村瀬監督のやりたいものを作るために、その舞台となる空間を作らなくてはいけないのですが、それに時間がかかりました。次作もお時間をいただくことになると思いますが、5年は長かったので、少し早めに出せればと思っています。