暴力は被害者の心身を深く傷つけ、トラウマ(心的外傷)となってその後の人生にも深刻な影響を及ぼしかねない。特に女性に対する暴力の背景には男性優位の社会構造や偏見が潜み、女性の活躍を阻む要因にもなる。8日の国際女性デーを前に、ジェンダーに基づく暴力の根絶を改めて社会全体で誓いたい。

 ドメスティックバイオレンス(DV)や性暴力を巡る相談は新型コロナウイルス禍を経て増加した。県と宇都宮、日光、小山、栃木の4市がそれぞれ設置する配偶者暴力相談支援センターへの年間相談件数は2021年度以降、3千件前後と高止まりの状態だ。県警のDV認知件数は24年に1135件と初めて千件を超え過去最多となった。

 とちぎ性暴力被害者サポートセンター(とちエール)への相談件数も、21年度に急増し、昨年度まで900~1200件台で推移している。

 DVや性暴力の被害は、生活基盤の喪失や予期せぬ妊娠のリスクをはらむ。こうした困難を抱えた女性の支援をするためにできたのが、困難女性支援法である。

 被害者には貧困や障害など、複雑な問題が絡むこともある。それぞれのケースに応じて関係機関や民間団体が連携し、きめ細かな支援を行うことが求められる。県は新年度、民間団体と連携し、困難を抱えた女性が安心して過ごせる一時的な居場所や、生活再建のためのステップハウスを整備する。現在、県と連携して女性支援に当たる民間団体は一つだけだが、さらに増えることを望む。女性相談支援員の確保と処遇改善も重要な課題だ。

 県内でも学校や保育施設で盗撮やわいせつ事件が発生している。交流サイト(SNS)の影響で性被害の低年齢化も指摘されており、極めて憂慮すべき事態だ。「同意のない性的な行為は全て性暴力である」という認識を、社会で共有する必要がある。

 県は「加害者にも被害者にも、傍観者にもならないよう、発達段階に応じた教育や啓発を推進する」としている。その一環として、DV・性暴力防止のための講座を、本年度までに延べ50校以上の高校で実施してきた。今後5年間も同様に取り組む方針だ。性別にかかわらず、全生徒の安全・安心、将来の人生に関わることであり、全ての高校で実施するべきだ。

 全国ではここ数年、悪質なホストクラブが女性客に高額な売掛金を負わせ売春を強要する事件や、SNSを介した売買春が相次いで発覚した。

 売春防止法は制定から70年となる今年、法務省が有識者検討会を設置し、見直しに向けた議論を始める。これまで売る側のみだった処罰の対象を、買う側にも拡大するかどうかが焦点となる。

 男性が政治的にも社会的にも経済的にも圧倒的優位に立っていた時代にできた法律であり、見直しが行われるのは当然だ。むしろ遅きに失したと言わざるを得ない。ジェンダー平等の視点に立った議論となるよう注視したい。

 女性・少女に対するあらゆる暴力の阻止と撤廃を訴えた世界女性会議(北京会議)から30年が過ぎた。世界中で今も被害に苦しむ女性がいる。暴力をなくすため、考え得る全ての対策を講じ、強力に推し進めなければならない。