多くの産業が直面している人手不足は、豊富な観光資源を有する本県の観光業界にも影を落としている。県はデジタルトランスフォーメーション(DX)技術を活用し、この局面を打開しようと動き出した。
新年度から5カ年計画で始まるとちぎ観光立県戦略の中で、県は2030年の観光消費額を24年比で19・7%増の1兆1562億円とする目標を掲げた。だが県内の多くのホテルや旅館で「人手が足りずフル稼働できない」という声がある現状では、心もとない。
観光DXには一つの施設で完結できるもの、エリア全体として解決すべきものがある。成功の鍵は導入コストをいかに下げるかだろう。まずは身近なところから手を付け、徐々に広げて効率化を図り稼ぐ力を磨きたい。
一つの施設でできるものと言えば、ロボットの導入である。既に多くのホテルなどでチェックインの無人化や、掃除・配膳ロボットの導入が進んでいる。
宿泊予約システムや人工知能(AI)による多言語案内も想定される。特にインバウンド(訪日客)対応において多言語対応は、言葉の壁による業務停滞を防ぐ効果を期待できる。
これらの中には観光庁や中小企業庁などの省庁から補助対象となっているものもある。県は業界のニーズをくみ取り、普及に努めてほしい。
AIによる接客や集客が進めば、観光客の消費データに基づくプロモーションが可能になる。一施設からエリア全体に広がれば、消費額の向上にも直結するだろう。
山形県の上山(かみのやま)温泉では、複数の旅館が匿名化したデータを共有し、AIによる需要予測に活用している。最適な客単価や仕入れ量を算出し、宿泊単価の向上とフードロス削減を同時に達成したという。本県でも参考にしたい。
人手不足の解消だけに注目すれば、旅館の「泊食分離」も効果的だ。最も人手を要する「夕食の準備・配膳・片付け」を切り離すことで、少ないスタッフでも施設をフル稼働できるようになる。
周辺の飲食店と連携し、予約システムをDX化すれば効果はさらに高まる。宿泊客が街に出ることで、地域の飲食店や商店にも恩恵が回る。県が目指す観光消費額の拡大にも貢献できるだろう。
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