足利市が旧競馬場跡地(同市五十部(よべ)町)に整備する方針の新市民会館に関して、市議会は早川尚秀(はやかわなおひで)市長に提言書を提出した。大ホールの座席数を「1500席程度が望ましい」と求めた。
物価や人件費の高騰であらゆる経費が増大し、公共工事に大きな影響をもたらしている。コスト抑制に努めることを前提に、市にはシビックプライド(地元への誇り)の醸成につながる新たな文化の殿堂の建設を期待したい。
市は昨年9月、新市民会館と新市役所庁舎を複合化し、整備する方針を公表した。今年10月に策定する基本計画に向け、整備内容の検討を進めている。
これと並行して市議会は、特別委員会で勉強会やワークショップを実施し意見を取りまとめた。大ホールは毎年開催しているNHK交響楽団や世界的な指揮者佐渡裕(さどゆたか)さんのコンサートの継続開催を前提としつつ、建築費も考慮した。小ホールは多目的に使用でき、稼働率も高くなる規模として300席が望ましいとした。
市が示している整備基本構想では、大ホール客席数を1200~1500席としている。市議会によると、席数が300席増えると工費が約11億円増えるとの試算がある。
那須塩原市の新庁舎計画を巡っては昨年、建設工事の入札参加を申請していた業者が辞退し入札が不調となった。資材や人件費の高騰、慢性的な労働力不足が要因という。
このような事態は年々相次ぎ、新市民会館の建設の障壁となることは間違いない。費用対効果の観点からも、どの規模が適当なのか、慎重に判断する必要があるだろう。
しかし、単なるコスト削減や規模の縮小だけを目的に結論を出してはならない。経費増大が避けられない今だからこそ、何よりも重要なのが基本計画のコンセプトではないだろうか。
「何のための施設か」という根本的な目的や特徴を明確化すべきだ。個性や魅力を打ち出すことは来館者や出演者の支持につながり、将来にわたる持続可能な施設運営にもつながるはずだ。
明確なコンセプトに基づくソフトの充実があってこそ、適正なハードの規模もおのずと見えてくる。市民が深く愛着を持ち、「歴史と文化の街・足利」にふさわしい魅力ある施設を目指してほしい。
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