文化財の保護を巡る所有者の負担が増している。県文化振興課によると、特に建造物は資材や人件費の高騰もあり、修繕費の大部分を補助金でまかなえても、残りの自己負担分が高額となり断念するケースは少なくない。

 所有者の負担を軽減し、貴重な文化財を地域全体で支えるため、新たな資金調達の普及に取り組む必要がある。

 国重要文化財(重文)の建造物の場合、最大85%の国庫補助に加え、県や市町の補助がある。それでも所有者の負担は数百万円に上ることが珍しくない。県は自己資金調達を促すため、インターネットで広く寄付を募るクラウドファンディグ(CF)の専門家による助言を2024年度に始めた。既に3件のCFが行われ、成功した例もある。

 足利市の国指定天然記念物、名草巨石群に位置する名草厳島神社は、屋根の銅板が盗難被害に遭い、氏子である地元住民らが実行委員会を結成してCFを昨年実施した。約2カ月間で目標の500万円を超える寄付が集まった。

 NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」のロケ地となった益子町の国重文、綱神社と大倉神社は、氏子や地元自治会で作る修理委員会が今月末までCFを実施している。かやぶき屋根のふき替え費用は、前回実施した16年前の約3倍に膨らみ、全体の修繕事業費は4500万円に上る。うち500万円を募りたいという。

 昨年、山林火災でかやぶき屋根の一部が被害を受けた矢板市の国重文、荒井家住宅の所有者もCFを始めた。映画「ゴールデンカムイ網走監獄襲撃編」の撮影にも使用された築200年以上の古民家で、屋根のふき替えにかかる修繕費用は約1億円となる見込みという。自己負担分500万円のうち300万円を目標としている。

 CFは全国から寄付を集めることが可能である半面、ホームページを作成する技術や寄付者への返礼、手数料などの負担も生じる。文化財所有者には高齢者も多い。きめ細かな支援が求められる。

 全国では、ふるさと納税や文化財を活用した体験事業による収益で自己資金を確保する試みも始まっている。文化財は人を呼び込む観光資源や、まちづくりの拠点としての可能性も秘める。所有者だけでなく行政や地域が一体となって知恵を絞り、文化財を未来へ引き継ぎたい。