モバイルバッテリーなどに使われるリチウムイオン電池由来の火災が、後を絶たない。宿泊施設や交通機関での出火は多くの人命に関わる。回収先のごみ処理施設での出火は、地域社会の暮らしを揺るがしかねない。
事案の多くは利用者側の誤った使用が原因とされる。利用者のモラルに委ねるしかない部分もあるが、禁止行為だけを重ねて訴えても事故は防げないだろう。利便性と安全性を両立させ、利用者が納得できる対策が求められる。
消防庁によると、リチウムイオン電池由来の火災件数は2022年に全国で601件だったが、25年は1297件と急増している。経年劣化した製品を使用したことなどが原因とみられる。
リチウムイオン電池は湿気や水分、外部からの衝撃に弱い。直射日光が当たる場所では電池が異常高温になる。何らかの理由で人が気付かないうちに発火する恐れもある。
このため宇都宮市内のあるホテルでは、浴室や洗面台付近などでの使用や、就寝中の充電を禁止行為としている。だが旅行中の宿泊客にしてみれば就寝中のモバイル機器充電を禁止されても、守るのは難しいのが実情ではないか。
宿泊施設ができる現実的な対策としては、客が持ち込む粗悪な充電器具を使わせないよう、客室壁面に信頼性の高い充電設備を用意することなどが考えられる。宿泊客は、浴室や洗面台付近で充電しないようにもしたい。
電車やバスなどにモバイルバッテリーを持ち込むには、さらに注意が必要だ。利用者は万が一の発火に素早く気づけるよう、手荷物として身近に置くことを徹底すべきだ。
リチウムイオン電池は、役目を終えて捨てられた後も警戒が必要である。22年に宇都宮市のごみ処理施設「クリーンパーク茂原」で発生した火災事故は、市のごみ処理能力の約7割を半年以上失うという非常事態を招いた。出火原因は不明だが、リチウムイオン電池由来の疑いもある。
市はその後、複雑だったごみ出しルールを簡素化し、電池類としてごみステーションで回収できるようにした。その結果、不燃ごみへの混入や、発火事案が大幅に減ったという。市民の利便性を高めれば、重大事故を未然に防ぐ可能性が高まる良い事例である。他の自治体でも参考にしたい。
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