◎今週の一推しイベント
【11日(土)】
▽「企画展 スープはいのち」(~8月9日、港区・21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2)
水と食材を火にかけて作る“最小限の食”スープを入り口に、命を育む環境を見つめ直す展覧会が、六本木で開催されている。
“宿る”“結ぶ”など、生を巡る12の動詞で展示を構成。例えば“味わう”をテーマに、さまざまな植物で染めたテキスタイルと、同じ素材から作られたスープの動画を並べ、土に根ざした自然がもたらす豊かさを表現した。“包む”の映像作品(岡篤郎)は、乳児や老人、病人らの生命をつなぐ重湯を題材に、食の本来のあり方を提示する。
展覧会ディレクターの遠山夏未さんは「身体を外側から包むのが衣と住なら、食は内側から人を包む。自分が病気にかかった時、また旅先の世界での食事から、日常を支える食はスープに集約されていると実感した」と振り返る。その体験を基に、衣食住の根源を巡る循環の物語を、多彩な作家たちと共に企画した。
巨大なインスタレーション「はじまりのスープ」は、人が初めて摂取する羊水を「胎児を包むスープ」と捉え、“包まれる”を象徴。張り巡らされた無数の蚕の糸が、羊水をイメージした水を吸い、母体の鼓動のような音響とともに、生命の気配を体感させる。
圧巻は、土を混ぜ込んだ和紙による大屋根だ。三内丸山遺跡を連想させる空間で靴を脱ぐと、足裏にラグの心地よい感触が伝わる。「太古から人々は集い共に食べ、話すことで生きてきた。その原風景に触れてほしい」。公団住宅で使用されていたキッチン(日本初の女性建築家とされる浜口ミホが設計)に現代の家電を組み合わせた空間展示「台所で遊ぶ」(山フーズ)も、家族で食卓を囲む喜びを想起させる。
企画協力の小池一子さんは「スープを平和に飲める日々が今、当たり前ではなくなった。命が奪われる現実に慣れてしまうことほど恐ろしいことはない。“生の本質”を分かち合い、次世代へ手渡す大切さをこの会場で感じてほしい」と期待を込めた。
○そのほかのお薦めイベント
【11日(土)】
▽「SUPER PAPER MARKET IN GINZA」(~24日、中央区、入場無料)
高度な印刷・紙加工技術を使った紙製品で知られる福永紙工(立川市)が、多様なクリエーターとの協働でアート作品の制作を開始して20年。その節目を記念した展覧会が銀座三越で開かれている。
建築家やデザイナーらとチームを組み、紙の新たな魅力を引き出した製品の数々が会場を彩る。
見どころは、同社の代表作“空気の器”の数々だ。特殊な切れ目を入れた平らな紙を広げると、形や表情が自在に変わるのが特徴。野老朝雄さんによる独創的な文様など、著名デザイナーたちとの協働を楽しめる。会場天井にいくつもつるした空気の器が、光を通して揺れる。アーティストさくらゆきさんの水彩「春のおとずれ」とのコラボレーション作は、ピンクや黄色の色彩が溶け合い、生命力を感じさせる。
建築家の寺田尚樹さんとのプロジェクトでは、100分の1スケールでさまざまなシーンを切り取った模型を制作。楽器一つまで精巧にかたどったオーケストラの演奏風景や、躍動感あふれる自転車ロードレースの場面、桜の木の下に人々がたたずむ春の情景―。緻密な手仕事が、紙に物語を吹き込んでいる。
三越の企画担当、船津直樹さんは「日本人は古くから紙と寄り添い暮らしてきた。その繊細な感性と技術を掛け合わせれば、素晴らしいアートにも、生活に役立つ道具にもなる。紙が秘めた無限の可能性を世界へ発信したい」と語った。
▽「ブルー ボックス カフェ『桜テラス』」(~5月31日終了予定、中央区、事前予約制)
ティファニー銀座が、店内4階の「ブルー ボックス カフェ」で期間限定の「桜テラス」を展開している。同カフェは2025年に国内初オープンし、ブランドの伝統と日本の食材を融合させた体験を提供している。
テラスに河津桜と吉野桜を生け、銀座の中央通りを望みながら花を鑑賞できる空間を創出した。提供される限定メニューは、国際的評価の高いシェフ、庄司夏子さんが監修。桜の葉の香りが漂う「桜の苺ショートケーキ」や、ハーブを使ったゼリーにトニックを注いだノンアルコールドリンク「桜モクテル」など、視覚と味覚で春を表現した品々が並ぶ。
桜テラスと店内の一部は予約不要で案内しており、都心で季節の移ろいを感じられる場となっている。
【15日(水)】
▽「AIで変わる若年女性支援」(19時、事前予約制、オンライン開催)
悩みを抱える若い世代に、行政や支援団体より「まずAIに相談する」習慣が広がりつつある。こうした支援現場の急激な変化を捉え、NPO法人風テラス(豊島区)の発起人、坂爪真吾さんを講師に迎えたセミナーが開催される。
坂爪さんは、夜職女性向けAI相談サービス「YOLUMINA(ヨルミナ)」の開発・運営に携わる。昨年12月のスタートから3カ月で利用者が400人を超え、延べ3400件もの相談に対応してきた。
講演では、生活費や借金、メンタル不調など、実際にAIへ寄せられる相談事例を紹介。相談の「入り口」がAIに置き換わる時代に、これまでの訪問型支援や相談業務の在り方がどう変わるのか、知見を共有する。
支援現場でAIを活用するメリットとリスク、人間との役割分担など、NPOや行政担当者が直面する課題についても共有。AIを排除するのではなく、支援の質を高めるパートナーとして共存させるため、次世代支援モデルを提示する。
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