交流サイト(SNS)などのインターネット上で一時期、「足利市内の公園で白昼、日本人夫婦が外国人に襲われた」との情報が急速に拡散した。下野新聞社が地元自治会関係者や捜査関係者らに取材した結果、この情報を裏付ける具体的証拠や客観的事実は確認できなかった。
こうした真偽不明の情報拡散は、社会の平穏を脅かす。情報を配信する「場」を提供するプラットフォーム企業には、チェック体制の強化や責任の明確化などの対策を求めたい。一方、利用者は拡散に加担することは「無自覚な加害者」となりうることを自覚しなければならない。
拡散した情報は「公園を散策していた日本人夫婦が外国人に襲われ、妻は暴行を受けた。犯人は捕まっておらず、妻は自殺し、夫は他の地域に転居した」という内容だ。数年前から出回っており、昨秋から拡散の勢いが増した。
市もこの問題を独自に調査し、「事案は確認されず、ネットで出回る話は事実でない」と結論付けた。公園周辺に長年住む自治会関係者や複数の住民は「聞いたことがない」と一様に否定。捜査関係者も「そのような事件は把握していない」とする。
市関係者は拡散の背景に「外国人排斥感情の高まり」を指摘する。国籍を問わず法を犯す者には厳然と対処すべきだが、根拠のないデマで特定の人をおとしめることは断じて許されない。
一昨年11月の兵庫県知事選でも、デマや真偽不明の情報があたかも事実であるかのように拡散され、選挙結果に影響したとされる。災害が発生する度に、生成人工知能(AI)で作られたセンセーショナルな画像などが広まり、被災者に強い混乱や不安を与えてもいる。
フェイクニュースは人々の正義感に訴える要素が含まれている場合があり、正しい情報よりも早く広く拡散するとの調査結果がある。社会に実害をもたらし、混乱を引き起こす可能性があり、特定の人物や団体への偏見や誤解を生む原因にもなる。
自分は無関係だと思っていても、ネットの風向きが変われば、誰もが誤情報拡散の被害者になりうることも肝に銘じるべきだ。誤情報を見抜くため、メディアリテラシーを高める教育に社会全体でより積極的に取り組むべきだろう。
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