高橋一生=4月、岡山市北区

 『脛擦りの森』より((c)『脛擦りの森』プロジェクト、配給:シンカ)

 インタビューを受ける高橋一生=4月、岡山市北区

 『脛擦りの森』より((c)『脛擦りの森』プロジェクト、配給:シンカ)

 高橋一生=4月、岡山市北区  『脛擦りの森』より((c)『脛擦りの森』プロジェクト、配給:シンカ)  インタビューを受ける高橋一生=4月、岡山市北区  『脛擦りの森』より((c)『脛擦りの森』プロジェクト、配給:シンカ)

 俳優の高橋一生が主演の映画『脛擦りの森』(4月10日全国公開)。岡山に伝わる妖怪「すねこすり」をモチーフに、渡辺一貴監督が書き下ろした不思議な物語で、ロケも岡山で行われた。2人は、NHKの人気テレビドラマシリーズ「岸辺露伴は動かない」や映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」などでタッグを組んできた。撮影時の雰囲気を「幽玄の世界」と振り返る高橋は「森に迷い込むような感覚になってもらえたら」と映画の魅力を語った。(取材・文 共同通信=矢崎碧、井上陽南子)

 【脛擦りの森】

 森の中をさまよう、足に傷を負った若い男(黒崎煌代)。洞窟をくぐった先に現れた古い神社には、謎の老人(高橋一生)とその妻・さゆり(蒼戸虹子)が暮らしていた。傷の手当てを受けながら、穏やかな時間を過ごす男だったが…。

▼記者 岡山に伝わる妖怪「すねこすり」の伝承がモチーフの映画です。もともと妖怪がお好きだとうかがいました。

●高橋 一貴さんから「(映画のタイトルが)『脛擦りの森』って言うんですけど」とお話をいただいて。「僕、すねこすり大好きなんですよ」という話になったんです。

 妖怪って、人間の恐怖から生まれたものだと思うんです。人間は往々にして目に見えないものに形を与えて安心したがる生き物で、恐怖の対象として形を与えてしまうということ自体が人間の奥ゆかしさと奥深さなのではないか、とも思うんです。

 妖怪の絵を見るのが子供の頃から好きでした。数ある妖怪の中で、すねこすりだけ全然怖くなかったんです。場所によるとは思うんですけど、だいたい人の足元にまとわりついてつまずかせるぐらいですよね。なんでそんな妖怪が存在しているのか、子供ながらすごく不思議に思っていて。とっても好きなんです、よくわからないものがいる感じが。

 自分が出演させていただく作品が自分の好きなものをモチーフにしている。そうしたお話をいただけること自体がとてもまれなことなので、そういった意味でなにか縁めいたものを感じました。今回は、ちょっと違った雰囲気のすねこすりの解釈が表現されていると思うので、楽しみにしていただければなと思います。

▼記者 岡山でのロケで印象に残ったエピソードを教えてください。

●高橋 穴門山神社(岡山県高梁市の県指定重要文化財)周辺で撮影をさせていただいた時のことです。この場所で撮影させていただけるんだということを、まずありがたく思いましたね。建立されたのがいつなのか定かではない、と現地の方がおっしゃっていて。その場所を主な舞台として撮影ができるということ自体、そうそうあることではないので、とてもありがたいと思いながら撮影していました。撮影の合間も仕事そっちのけで、(神社や周辺の地形の)この造形はなんでこういう風にできたんですかね、と現地の方を質問攻めにしてしまって、ちょっと申し訳なかったなって思っております(笑)。

 撮影している最中は、刻々と天気が変わっていくんです。晴れているのに雨がぱらつく「キツネの嫁入り」という現象がありますが、その雪バージョンみたいなことが起きて、次の瞬間にはもう曇り空になって。そうした幽玄の世界のような中で芝居できるのは、なかなか希有なことだと思いながら撮影に臨ませていただいていました。

▼記者 岡山はどんな点が魅力でしたか。

●高橋 やっぱり自然ですかね。サポートしてくださった方たちもとても温かく迎え入れてくださったので、できればまたご縁があってお仕事で来られたらいいなと思っています。

▼記者 セリフの少ない映画ですが、演じる上で意識されたことは。

●高橋 空間にしっかりと溶け込んだ上でお芝居ができたらな、ということを意識していました。自分で何か語ったりとか、何か出してみたりしようとかは、あまり考えなかったかもしれないですね。

 セリフで語れることはもちろん多くあると思うのですが、「たたずまい」や「いずまい」でお芝居を語っていけるというのは一つの理想でした。とてもチャレンジングで、それを一貴さんのお話(脚本)でさせていただけたことはとてもうれしかったです。

▼記者 今回の作品の見どころと、映画を見る皆さんへのメッセージがあればお聞かせください。

●高橋 絵画を見ているような感覚になっていただけるんじゃないかなと思います。もちろん静止画ではないですけれど、美しい風景と、どこか妖しげで人を誘い込むような森に映っているので、映画館に足を運ばれた方たちが、実際に迷い込んでいるような感覚になるんじゃないかなと思います。どこか別の世界にいざなわれてしまうような感覚をそのまま、起承転結を気にせず、ただ観客席に座っていただいて体験していただければなと思っています。