今月中旬、記者の元に目を疑う写真が届いた。矢板市東泉の堀越遺跡いっぱいに咲き誇る菜の花畑。そこに浮かぶ巨大な黄色い四角形-。まるでミステリーサークルや、ペルーの「ナスカの地上絵」のようだ。謎の“ミステリースクエア”の正体を追った。

増渕さんが空撮した堀越遺跡の写真。中央下の菜の花畑右側に謎の黄色い四角形が浮かぶ
増渕さんが空撮した堀越遺跡の写真。中央下の菜の花畑右側に謎の黄色い四角形が浮かぶ

 問題の写真は同市末広町、林業増渕達也(ますぶちたつや)さん(40)が今月11日午前9時ごろ、地上約80メートルの高さからドローンで撮影。日光連山や高原山の美しい景観と共に、見頃を迎えた菜の花畑を写真に収めたところ、遺跡北部に巨大な四角形が浮かび上がっていた。

 他の場所より高く成長した菜の花が強調されて四角形をなしており、遺跡の大きさから推測して約50メートル四方にも及ぶ。「オカルト的なものでは」との思いも頭をよぎったという。

 同市教育委員会によると、県指定文化財の堀越遺跡は古墳時代前期の豪族居館跡や、平安時代の掘っ立て柱建物跡群が配置された「荘園」などの施設だったと考察されている。指定面積は約1万2千平方メートル。

 有識者の見解を求め、同市文化財愛護協会の白石哲夫(しらいしてつお)会長(78)を訪ねると、驚きの事実が判明した。

 県教育委員会が1987~92年に実施した同遺跡の発掘調査に参加していた白石会長。見せてくれた調査報告書の写真に見覚えのある四角形が。祭祀(さいし)施設として使われていたとされる豪族居館跡を囲う大堀が、増渕さんの撮影した四角形とぴったり重なるのだ。

堀越遺跡発掘調査報告書の写真。中央に豪族居館跡の大堀が掘られている
堀越遺跡発掘調査報告書の写真。中央に豪族居館跡の大堀が掘られている

 ではなぜ、堀部分の菜の花だけが他より成長したのか。白石さんによると、発掘調査の際に同遺跡を公園として整備する計画があったため、堀を埋め立てる必要があった。後からでも堀の位置が分かるよう、土と区別するためコメのもみ殻で埋め立てたといい「もみ殻の栄養分で周りよりも成長したのでは」。

 菜の花畑の写真を見た白石会長は「30余年越しに大堀を見ることができてうれしい」と目を細めた。増渕さんに伝えると「文化財を後世に残したい強い思いが面白い偶然を生んでいたとは」と驚いていた。