那珂川町(旧馬頭町)で1990年に大量の産業廃棄物が不法投棄された事件で、県による廃棄物の撤去と跡地の復旧作業が3月完了した。事件発覚から実に36年もの長い時間が経過した。

 不法投棄は早期発見、早期封じ込めができないと、被害も費用も雪だるま式に増えるということが、この事件の教訓である。結果として住民の心理的不安も増す。関係者がこの間に経験した苦労と努力に敬意を払うとともに、二度とこのような事件を起こさぬよう、あらゆる手を尽くして防止策を講じたい。

 事件は、同町の山間部で建築廃材など約3万1千立方メートルもの不法投棄が発覚したことから始まった。地元業者らが逮捕されたが、廃棄物は放置された状態が続いた。

 県は町内に管理型の最終処分場を設置して不法投棄された産廃の処理を計画したが、地元の賛否は割れた。徹底した水質管理などを県が地元に約束して最終処分場「エコグリーンとちぎ」が稼働し、不法投棄物の処理が始まったのは2023年になっていた。

 産業廃棄物を最終処分できる管理型の県営処分場は、今もエコグリーンだけである。仮に事件発覚当時に同種の受け皿が県内にあったら、問題はこれほど長期化しなかったかもしれない。

 適正処理ができるエコグリーンの整備は、違法廃棄物の処理と復旧を可能にした。最終処分場の整備は立地調整が難しく用地確保に時間がかかる。それでも余力のある処理能力の確保は、県の責任であると、肝に銘じたい。

 悪質な業者の「やり逃げ」を許さない仕組みも必要である。県によると、県内で24年度に10トン以上の産廃不法投棄事件は4件だったが、小規模な不法投棄は159件あり後を絶たない。

 20年度には有害物質を含んだ産廃が県内12市町に不法投棄された。この事件で宇都宮市内の解体業者が有罪判決を受けたが、不法投棄物の撤去には応じず県が数億円かけて代執行している。

 やはり未然防止に勝る不法投棄対策はない。那珂川町の事件が発生した1990年代に比べて、防犯カメラは劇的に安く、しかも高性能になった。近年は空からの監視に使えるドローンもある。これら情報通信機器も活用しながら、官民が協力して不法投棄を撲滅できる体制を整えたい。