各地に残る文化財は先人の営みを伝え、土地の誇りを育むものである。

 文化財は遺跡や神社仏閣、古民家、民謡舞踊、祭りなど幅広い。少子高齢化、過疎化の進展で、地域が担っていた文化財の維持活動が難しくなったり、旧家の代替わりで文書などが散逸したりすることがままある。こうした事態に備えなければならない。

 県内6市町は、保存活用するための「地域計画」を策定している。これに伴う国などの支援策をてこに、施策を力強く進めてほしい。未策定の市町も計画に目を向けることが必要だ。

 計画は2019年に施行された改正文化財保護法で位置づけられ、活用も重視している。観光などに使えれば、保存の財源を捻出できる可能性がある。県内で策定済みなのは下野、大田原、那須塩原、小山、宇都宮、上三川の各市町。県によると他にも策定に着手した自治体がある。さらなる動きも待たれる。

 いち早く20年に策定した下野市は、古墳~飛鳥時代の東国の変遷を示す重要な遺跡が集中していることを受け、計画に沿って「東の飛鳥プロジェクト」に取り組む。宇都宮市は「今も昔も住みやすい関東平野の里山都市」「文武に秀でた宇都宮氏」など8ストーリーを掲げる。各市町は特徴を打ち出す。

 市町は計画策定の利点を十分に意識したい。策定作業で、未指定を含めどんな文化財があるかが整理され、対応の優先順位を見極められる。文化財の意義を見つめ直し、新たなアピール点を見いだせるのではないか。支援策採択のハードルは下がり、手続きも弾力化する。専門家の知見が得やすくなるだろう。

 多くの市町は補助金を利用し保存活用の推進力になっているが、事業費の全額を賄うことは難しい。インターネット上で寄付を募るクラウドファンディング(CF)の活用も一案だ。県はCFの助言事業を行っている。民間の助成金もある。それらを受けるには寄付者らに訴える魅力あるストーリーが欠かせない。

 改正文化財保護法や地域計画は、市町のほか、所有者、民間の関係団体、住民など「地域社会総がかり」の保存活用を求めている。役割分担が明確になる効果も望める。

 まず地元がその地の貴重な歴史文化資源を知り、愛着を持つことが第一歩である。