東京屈指の商店街が駅前に広がる北区の十条。旅役者の一座が日々、人々を楽しませる演芸場や、足を運びたくなる銭湯もある。下町情緒が残る町を訪ねた。
JR十条駅を出て、その名も演芸場通りを歩くこと数分、のぼり旗がはためく「篠原演芸場」に着いた。75年の歴史がある大衆演劇専門の劇場で、月ごとに劇団が入れ替わり、ほぼ連日、公演を行う。
この日は、関西を中心に活動する「都若丸劇団」が公演。100席ほどの客席は満席で、名古屋から駆け付けたファンもいた。「年金が入ると来てくれる常連さんもいるんですよ」と演芸場の若女将、篠原美津子さん。
芝居と舞踊ショーの2部構成で、殺陣を交えた人情時代劇に、あちこちからはなをすする音が聞こえてくる。舞台と客席が近く、華やかなショーも見応え十分だ。公演の合間に、場内の茶屋で販売している若女将らの手作りおにぎりを頬張った。大きめでほんのり温かいのがうれしい。
上演後は、役者陣が演芸場前で客を見送る「送り出し」。「おおきに!」「また来るよ」。細い通りに笑顔があふれる。
駅方向へ戻り、東京三大銀座の一つに数えられる十条銀座商店街を散歩した。食品や衣料品、飲食店に理髪店など170もの店が連なるアーケード街は活気があり、コロッケを1個50円で売る店も。近くに住んでいたら通ってしまいそうだ。
夕刻、商店街にほど近い銭湯「十條湯」に向かった。レトロな喫茶店「喫茶深海」が併設されており、時が止まったような、くつろげる空間だ。
地下水をくみ上げている銭湯の湯は肌あたりが軟らかく、「喫茶に来て、銭湯に興味を持ってお風呂に入ってくれるのが一番うれしい」と、おかみの横山昭子さんは笑顔で話す。喫茶深海の看板メニューは、きらきらと青く輝く「深海ゼリー」。ぷるんとした食感と優しい甘さに思わず笑みがこぼれた。
【ちなミニ】篠原演芸場の入場料は6、7月の劇団は大人2100円。
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