体感治安が著しく悪化している。
県警に寄せられた不審者や不審車両に関する相談は、先月14日に上三川町内の民家が襲われた強盗殺人事件を境に急増、同20日までの1週間に約280件あり、事件前の週の約3・5倍に上った。不審者情報を地図上で確認できる無料防犯アプリ「とちぎポリス」のダウンロード数も3倍近くに達している。
いずれも白昼の凄惨(せいさん)な事件が社会を揺るがしている表れである。体感治安の回復のために官民挙げて知恵を絞りたい。
影響は自治体にも及んでいる。上三川町は公共施設数十カ所への防犯カメラ増設を決めた。管理目的で施設の内側に向けていた防犯カメラを、今後は道路側などの公共空間に向けて設置する。各家庭が防犯カメラを設置する際の補助も検討するという。
複数の映像をバトンをつなぐようにして解析し、容疑者の足取りなどを追う「リレー捜査」が知られるように、防犯カメラが捜査に有効なのは論をまたない。今回の事件でも映像などから高校生が現場にいたことが確認され、発生3日目での実行犯4人全員のスピード逮捕につながった。
一方、本県を含め全国で女児殺害事件が相次いだ約20年前には、通学路への防犯カメラ設置を巡り「監視社会」になる懸念が相次いだ。現在も防犯カメラがプライバシーを侵害する恐れがあることに変わりはない。過度な設置にならないよう慎重を期すとともに、住民への丁寧な説明と理解を求める努力が不可欠だ。
ただ、防犯カメラに万能の抑止効果は見込めない。事件では被害民家に防犯カメラが設置されていたが、実行犯たちが気にするそぶりは見られなかったという。
事件は県警が周辺を数十回パトロールするなど警戒を強める中で起きている。多数寄せられていた不審者などに関する情報を地元消防団や自治会が共有してもいた。流出した個人情報を基に、執拗(しつよう)に標的を狙い続ける匿名・流動型犯罪グループへの対応の困難さが浮き彫りとなっている。
安心できるはずの自宅で日中に一人の命が無残に奪われた悲劇をあらためて防犯について考える契機にし、新たな対策の手だてを見いださないといけない。その手がかりをつかむためにも、一刻も早い事件の全容解明を望みたい。
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