宇都宮市の中心市街地で7日クマが相次いで目撃され、県民に大きな衝撃を与えている。県内ではこれまで日光や那須地方など山間部での問題とみられてきたが、平野部の中心市街地への侵入という新たな段階に移行したとも考えられる。
都市に侵入するクマは「アーバン・ベア」と呼ばれ、人を怖がらない個体が多い。駆除しようとしても、人の多い市街地では発砲が難しい。興奮したクマが人を襲うことも想定される。官民を挙げてアーバン・ベア対策の強化が必要だ。
クマは6日早朝に宇都宮市北部の山林や近隣の住宅地で目撃され、7日未明には県庁付近や繁華街のオリオン通りでも目撃。同日夕には市南部の住宅地に移動した。これまでの目撃情報から、同一の個体とみられる。
山から市街地の周縁部を経て中心市街地へ侵入するのは、東北各地の都市部でもあった典型的なパターンである。一般に大型獣は河川敷づたいに移動する例が多い。侵入ルートとして田川や釜川など、宇都宮市郊外から中心市街地につながる回廊を再点検する必要があるだろう。
県ツキノワグマ管理計画によると、2024年度の県内の推定生息数は約961頭で、10年前の約2倍に増えた。山間部でのなわばり争いに敗れた個体が、新たな生息地を求めて移動している可能性がある。
そもそも同計画は、宇都宮市を対象地域としていない。県と宇都宮市は、アーバン・ベアに特化した対策を別に練り直すべきである。
人とクマを隔てていた里山は、人口減少や高齢化で管理が難しくなっている。クマがやぶに身を潜めて移動しやすくなった。人里の庭先で放置された果実や生ごみの味を覚えたクマは、人里に執着するようになるとされる。
クマはもともと高い知能と学習能力を持っている。最近では福島市内の工場に侵入したクマが、窓の鍵を開けて脱出したとされる例がある。蛇口をひねって水を飲んだ行動も目撃された。人里での成功体験をさせない、学習させない環境づくりが大切だ。
宇都宮市でのクマ出没は、偶然の異変と捉えない方がよい。問われているのはこの1頭の捕獲ではなく、人と野生の境界をどう線引きするべきかであろう。
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