新聞やテレビ、WEBなどで、本の広告を目にすることがあますよね。

「〇〇万部突破!」「続々重版!」 などと、景気のよいコピーと共に。

 2022年に小説家デビューしたころ、10年ほど前に刊行されたとある作家さんのエッセイを読んだ私は、中の一文に衝撃を受けました。

「初版部数が1万部を下回るようだったら、次作オファーはないと思った方がいい」

1万部!? なんですかその数字は。ああ、私はもうダメだ。

 誰かと雑談していて、ときどき質問されることがあります。

それは

「あの作品の印税いくらなんですか」

そのときの答えは…。

「印税の計算方法は次のとおりです」

印税の計算というものは、ざっくり言って

本の定価×印税率×部数=印税です。 

もしも2000円の本が印税率10%で初版1万部だとしたら

2000×0.1×10,000=2,000,000 円(税引前)が、出版社から作者に支払われます。

すると次なる質問は、こうなるのです。 

「あなたのあの作品は、初版何部だったんですか」 

正直に答えると、生々しくなってしまう。 

「現在の出版事情では、平均的な初版部数というのはこのくらいで……」 

と、お伝えします。あとは「ご想像にお任せします」で終わりにします。 

 実際のところ、印税率10%はあくまでも平均です。もっと下回る場合もあるらしく、そもそも初版で1万部出せる作家さんが、今の世に何人いるだろうとも言われています。 

で、私はどうなのかといいますと、冒頭の一文を読んで衝撃を受けたレベルです。 

しかし、まさにその文を書いた作家さんが最近出したエッセイを読んだら 

「今は5000部がボリュームゾーンらしい」 

と書いてあり、胸をなでおろしました(よって次作オファーがあったわけです)。 

私の作品で初版部数がいちばん多いのは、「ナカスイ!海なし県の水産高校」(祥伝社文庫)。みなさまのおかげです…。
私の作品で初版部数がいちばん多いのは、「ナカスイ!海なし県の水産高校」(祥伝社文庫)。みなさまのおかげです…。

 ケースバイケースでしょうが、あれこれ読んだところでは、純文学は初版2000~4000部、エンタメ作品は5000~6000部あたりが現在の初版平均部数らしいです。 

さらに、過去に芥川賞を受賞した有名な作家さんでも、昨今の出版不況で初版部数を大きく下げられているという話がSNSでも最近話題になっていました。 

 「好きなことをやって生きていけるなら、どんなにお金が少なくても満足」とは思うのですが、やはり、生活費を稼がねば生きていけません。 

 特に私などは、夫が亡くなって一人暮らしになってしまったのですから、なおさらです。愛猫のご飯代も必要ですし。 

 本以外にも、有料コンテンツ配信などで収入を得る場合もあるようですが、やはりそれには、既存作品で読者がきっちりついていることが必要でしょう。 

 紙の高騰、書店の減少、初版部数削減など、厳しいニュースを毎日のように目にする今、どうすれば小説家として生きていけるのかと考えます。 

 結局のところ、ヒットする小説を書くしかない。でも、どんな小説がヒットするかは、分からない。ならば、次々に本を出すしかない。 

 つまりは、自分が面白いと思う小説を出版できるよう、日々努力を重ねるしかないのです。 

 そんなわけで、新しく本が出るたびに、「頑張ってきてね~」と手を振って本の背中を見送りたい気分になるのです。

私の作品で発行部数がいちばん多いのは、単行本の「ナカスイ!海なし県の水産高校」(祥伝社)です。次に「オリオンは静かに詠う」(小学館)、「ナカスイ!海なし県の海洋実習」と続きます
私の作品で発行部数がいちばん多いのは、単行本の「ナカスイ!海なし県の水産高校」(祥伝社)です。次に「オリオンは静かに詠う」(小学館)、「ナカスイ!海なし県の海洋実習」と続きます