「スマートフォンを使った家計支援の手続きが難しすぎる」。5月中旬、兵庫県加古川市の女性から神戸新聞社にこんな声が寄せられた。聞けば、同市が全市民に配布する「家計応援ギフト(5千円相当)」の申し込みが分かりにくく、希望する品物を選べなかったという。どう複雑なのか、確かめてみた。(神戸新聞)

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 国の「重点支援地方交付金」を活用した物価高対策で、PayPay(ペイペイ)などのキャッシュレスポイントかインターネット上で品物を決めるデジタルカタログを選択できる。希望すれば物理ギフト(プリペイドカードかカタログギフト冊子)も選べる。

注意書きあるが

 市は4月末に対象の約25万5千人に案内文を発送。情報提供者の女性は80代の両親に代わってスマホで手続きを始めた。ところが、母親が望んだプリペイドカードではなく、キャッシュレスポイントを選んでしまったという。

 なぜ、そうなったのか。同市内に住む男性(78)に依頼し、実際の手続きを見学させてもらった。

加古川の「家計応援ギフト」の案内文のイラスト(左下)と、スマホで申し込む際の実画面(右)。表示が異なっている
加古川の「家計応援ギフト」の案内文のイラスト(左下)と、スマホで申し込む際の実画面(右)。表示が異なっている

 市の案内文には「デジタルギフトの受け取り方」と記され、QRコードが記されている。デジタルカタログを希望する男性はスマホで読み取り、裏面の操作手順のイラストに沿って「お問い合わせ番号(ID)」とパスワードを入力した。すると、本人確認を済ませたところで手が止まった。

 見ると、画面の表示とイラストの内容が異なっている。落ち着いて確認すれば、キャッシュレスポイントかデジタルカタログの選択だと分かるが、男性は戸惑ってしまったようだ。

 実は、この段階でどちらかを選択すると物理ギフトは選べなくなる。希望者は前段階でスマホの操作を中断し、コールセンターに直接電話する必要がある。画面には途中、その注意書きが2度表示され、案内文にも記載があったが男性は読み飛ばしていた。

問い合わせ多数

 さらに手続きを進めると、別のIDとPINコード(暗証番号)が表示され、別サイトに移行して入力しなければならない。普段からネット通販などを利用していれば簡単かもしれないが、男性は「教えてもらいながらでなければ諦めていた」とこぼした。

「物理ギフト」の希望者に向けてスマホ画面に表示される注意書き
「物理ギフト」の希望者に向けてスマホ画面に表示される注意書き

 女性は市に、プリペイドカードへの変更を求めたが「できない」と言われた。女性は「スマホ操作が苦手な人らは置いてきぼりにされた気がする」と納得できないでいる。

 市によると、ギフトに関する問い合わせは5月27日時点で約1700件に上る。担当者は「市民の多様なニーズに応えようと準備を進めてきたが、結果的に複雑な手続きになってしまった」と陳謝した。

 ギフトの申込期限は7月末まで。市は市役所に特設窓口を設置し、希望があれば職員が申請をサポートするという。手続き後の品物の交換について、担当者は「システムの都合上、難しい」としている。

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オンライン化進む行政手続き 高齢者への対応課題

 行政手続きのオンライン化は全国で進んでいる。デジタル庁の調査によると、兵庫県では2024年度末時点で全41市町が転出入届で導入しているのをはじめ、子育てや妊娠、介護の申請でも取り入れている。業務効率化と市民の利便性向上が目的だが、デジタルに不慣れな高齢者らへの対応が課題となっている。

 兵庫県が販売するプレミアム付きデジタル商品券「はばタンPay+(ペイプラス)」の購入もスマートフォンの利用が必須だ。第5弾は約118万人が申し込んだが、5月末までに約3万件もの問い合わせがあり、大半が操作方法に関する内容だったという。

 同庁は22年度から各地でデジタル推進委員を公募。高齢者らを対象にしたセミナーなどでマイナンバーカードやデジタルサービス利用の指導役を担ってもらっている。

 ただ情報通信機器の利活用に関する内閣府調査では、25年時点で18~39歳のスマホなどの利用率はほぼ100%だったのに対し、70歳以上は約4割が「利用していない」と答えた。デジタル格差は依然として解消されていないのが現状だ。