足尾銅山の銅生産に伴う煙害などで緑が失われた日光市足尾町の松木渓谷で、NPO法人「足尾に緑を育てる会」がボランティアで植樹を始めてから、今年で30年の節目を迎えた。
この間、延べ約24万人が約32万本を植樹した。国土交通省が山の斜面を階段状に基盤整備(山腹工)を行った「大畑沢緑の砂防ゾーン」約30ヘクタールは、赤茶けた山が見違えるほどに緑が復活した。
官民協働のモデル事業として全国の注目を集めただけでない。明治以来の負の遺産である「公害の原点・足尾」での地道な活動により、環境学習の聖地としても確固たる地位を固めた。関係者の長年の努力をたたえたい。
ただ、30年に及んだ活動は曲がり角に差し掛かっている。同会が先月主催したシンポジウムでは、植樹面積の拡大に、ボランティアだけでは維持管理が追いつかない現状が報告された。「植樹から育樹へ」と、発想を転換する時を迎えたのではないか。
報告によると、植樹が成功した大畑沢の下部では春に新緑、秋には紅葉が見られる森となった。だが斜面の上ほど植樹した苗木の活着率は低くなる。最上部付近では生い茂ったススキの下で苗木が枯れているのが目立つという。
初期に施工された砂防設備の老朽化も深刻だ。山腹工の壁面から実生の樹木が伸び、その圧力で斜面崩壊の可能性が指摘されている。ボランティアが植えた木々も大切なインフラの一部である。特に危険な箇所は、国交省が責任を持って管理すべきだ。
シカやイノシシなどによる食害も深刻化している。近年は松木渓谷でツキノワグマの目撃も報告されている。豊かな生態系が戻りつつあることの証左ではあるが、作業には慎重を期してほしい。
植樹には人が集まるが、除草には声をかけても集まらないのも悩みという。ただ識者からは「やみくもな除草ではなく、自然の自浄作用を助ける効率的な手入れをした方がよい」との提言もあった。30年がたち、同会の会員も高齢化が進んでいる。持続可能な活動のため、効率的な維持管理を目指すべきだ。
植樹活動に参加する市民や企業も、その後の木の成長も見守ってほしい。足尾の緑を真の意味で自立した森へと導く活動に、さらに多くの人々が関われる形にしたい。
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