宇都宮市の宇宙スタートアップが快挙を成し遂げた。スペースデブリ(宇宙ごみ)対策装置開発のBULL(ブル)が、軌道上実証に成功した。先月打ち上げられた日本の主力ロケット「H3」に搭載した自社製品である。

 栃木発の宇宙ベンチャーがH3ロケットで世界に挑んだ意義は大きい。だが、この成果をただの「快挙」で終わらせてはならない。問われるのは、本県から次に続く起業家を生み出せるかどうかだ。

 宇宙空間には人工衛星など宇宙機の残骸など、多種多様なごみが漂っている。同社の製品は宇宙機が役目を終えると作動し、約50平方メートルの薄い膜をヨットの帆のように広げて大気圏に落下させる。ロケットに搭載する製品の大きさは牛乳パック2個分ほどという。

 宇宙ごみは国際的な問題となっており、世界中の衛星メーカーが顧客ターゲットになり得る。今回の実証成功で宇宙ごみ対策の先駆的な企業として、ブランド価値が飛躍的に高まることが期待される。

 ただ、事業成功には高い壁があるのも事実だ。実際の運用では過酷な宇宙環境で数年後、確実に作動することが求められる。量産化、コスト圧縮も課題となろう。同社の宇藤恭士(うとうやすひと)社長は「今回の結果を基に、顧客のニーズに応じた製品開発を進めていく」と述べている。ぜひ実現してもらいたい。

 本県ではスタートアップ企業や大学発ベンチャーの数が、近隣県より少ない傾向にある。県が今年策定した「とちぎ産業成長戦略」でも課題として挙げられている。地方で世界最先端の宇宙ビジネスに取り組む同社の成功は、後に続く本県の若い起業家たちにとって励みになるだろう。

 この機会を捉え、県や宇都宮市はスタートアップ支援を強化したい。大学との連携は既に、さまざまな分野で行われている。今後求められるのは特許戦略や市場調査、法人設立までの事業支援の伴走だ。宇都宮大など県内の大学も、起業家を生む拠点としての自覚が必要だろう。

 本県は優れた技術者を育ててきたが、その成果を事業化して世界に送り出す仕組みは十分とは言えなかった。次に続く挑戦者を育む文化が、地域全体でつくり上げられるか。今回のBULLの成果は、「ものづくり県」である本県への問い掛けでもある。