今回は、公開利用(りよう)研究「昭和基地周辺地域(きちしゅうへんちいき)における火星模擬候補地(もぎこうほち)の調査(ちょうさ)」をしている新潟(にいがた)大助教の野口里奈(のぐちりな)隊員(たいいん)を紹介(しょうかい)します。
南極というと氷や雪に覆(おお)われているイメージがありますが、実はそうではない場所もあるのです。南極の露岩(ろがん)(むき出しになっている岩)域(いき)と呼(よ)ばれる場所では、赤茶けた地面がむき出しになっていて岩石がゴロゴロしています。植物も生えていないので火星と風景(ふうけい)がそっくりです。年間を通して、雪氷や雪もほとんどありません。
南極と火星の似(に)ているところは見た目だけではありません。南極は寒くてとても空気が乾燥(かんそう)しているのですが、火星も同じような環境(かんきょう)なのです。
こうした南極の火星っぽさを、火星で岩石や水がどのように風化・変質(へんしつ)するかの研究や、将来(しょうらい)の火星着陸探査(ちゃくりくたんさ)の準備に生かせないだろうか-。そのための“ロケーションハンティング(最適(さいてき)な場所探し)”が今回の調査の目的(もくてき)です。
第63次南極地域観測(かんそく)隊では、野口隊員はラングホブデやスカルブスネスなど五つの露岩域に行って岩石や水を採取(さいしゅ)したり写真をたくさん撮ったりしました。ときには急な斜面(しゃめん)を登ったり、風の強い中で調査したりすることもありました。火星っぽい場所を探(さが)すために、1日に15キロ以上(いじょう)歩いた日もありました。
こうして得(え)たサンプルやデータは日本に持ち帰って詳しく分析(ぶんせき)します。分析によって、火星っぽい場所、つまり「火星模擬地」が見つかれば、科学データ測定装置(そくていそうち)や探査(たんさ)ローバーなど今後火星に送(おく)り込(こ)む装置・ロボットのテストや火星と同じような環境で岩石・水の研究をすることができます。
南極では地球のことだけでなく、宇宙のことまで調べられる可能性(かのうせい)があるのですね。このように南極観測ではロマンあふれる研究を行っているのです。