今年、日本は戦後77年だった。だが、今は「戦後」というより「戦前」なのではないか-。そんな思いに駆られる1年だった。

 戦争を語り継ぐキャンペーン「#あちこちのすずさん」で、読者から寄せていただいた戦時下の体験談に触れる機会を得た。

 図らずも、ロシアの軍事侵攻によって2月に始まったウクライナ戦争を受け、「戦争を繰り返してはいけない」と願い、協力してくれた方が多かった。

 中でも忘れられないのは、90歳になる女性の話だ。ウクライナのニュースが流れると、テレビを消してしまうという。「宇都宮空襲のことを思い出すから」だ。「体験しているのとしていないのでは、恐ろしさが違いますよ」

 77年たっても消えない恐怖感。離れた国で今起きていることを経験した人が、こんな身近にいる。

 防衛費増額のための増税も検討され始めた。次の戦争まであと何年なのか。避ける手だてはないのか。過去を振り返って考えたい。