22歳。小5の夢、子牛を育て約10年

 

 冷たい風が吹く初冬。雄大な那須連山に囲まれた牛舎の中。悠々とした母牛たちの横で防寒用ジャケットを着た子牛が元気に駆け回っています。「牛たちが健やかに過ごせる環境を整えることが一番大切です」。若き和牛繫殖農家、秋元優花さん(22)は優しいまなざしを牛たちに送ります。

 秋元さんは黒毛和牛繫殖農家に生まれ、現在は三代目の父一繁さん(47)と繫殖牛約50頭、未経産の牛、子牛を合わせて約100頭のエサやりや牛舎の掃除、飼料生産などをしています。

 

 3姉妹の長女である秋元さんが継承を決めたのは小学5年の時。祖父の急逝を機に手伝いを始め、「いつも楽しそうに働く父の姿を見て、『私もやりたい』と思ったんです」。10年以上続けている子牛に哺乳瓶でミルクをあげる作業はベテランの域です。那須拓陽高校農業経営科から県農業大学校に進学し、大学校2年間で家畜人工授精師の資格を取得しました。

 

 重労働に挫折しかけた時もありましたが、「一緒に働いて改めてお父さんをカッコイイと思いました」。「目標は肥育農家さんに喜んでもらえる子牛を育てることです」と大きな瞳を輝かせる秋元さん。妹2人も畜産関係の道に進み、「姉としてうれしい」とますます瞳はキラキラ。さらに、10月には結婚もしました。

 喜び、愛情にあふれる笑顔を見たら、子牛が健やかに育たないはずがありません。