【那須塩原】2020年9月にJR黒磯駅西口前にオープンした市図書館(みるる)の21年度の入館者数は約30万人に上り、末広町の旧黒磯図書館時代からほぼ倍増したことが24日までに分かった。本の貸出者数(CD類含む)が入館者数全体の4分の1に満たない約7万人だったことから、勉強や休憩など本を借りる以外の目的で利用した人が大半を占めたとみられ、関係者は交流拠点としての機能に手応えを感じている。
同館によると、21年度の入館者数は29万8837人で、旧黒磯図書館があった19年度の14万840人から倍増。貸出者数は同年度比40%増の7万1592人、貸出点数は同22%増の30万4387点だった。
市の黒磯駅周辺整備事業の一環で建てられた同館は鉄骨2階建て、延べ床面積約4650平方メートルで、総工費は約24億円。蔵書数は約20万冊、閲覧席は408席ある。21年10月には県マロニエ建築賞に選出された。
館内は巨大な本棚で仕切られ、1階は雑誌を読みながらコーヒーが飲めるカフェスペースのほか、講演会などが開ける多目的ホールや子どもが寝転びながら読書を楽しめる「えほんのもり」、2階はグループで議論ができる階段状の「アクティブラーニングスペース」や勉強や読書に集中したい人向けの「サイレントラーニングスペース」がある。最近はボランティア活動や映画の上映会、企業の面接などで利用されるケースも増えているという。
5歳の子どもを連れた市内在住の女性(45)は「2週間に一度は来る。普通の図書館より設備が充実しているので楽しい」、電車通学する県立高校3年の男子生徒(17)は「雰囲気が気に入っている。駅前にあるので電車の時間に合わせて受験勉強できるのもいい」と話す。
課題は電気代だけで年間2千万円近くかかる維持管理費で、捻出のために市は昨年9月から、館内一部スペースのネーミングライツ(命名権)事業のパートナーを募集している。
同館の山田隆(やまだたかし)館長(63)は「新型コロナウイルスに配慮しながらの運営だったが、『地域交流や観光活性化の拠点』という建設の目的は果たせている。今後は公共施設の役割を果たしながら採算性を少しでも高める方法を探りたい」と先を見据えた。