高嶋晃さん

 下敷きのように薄くて軽く、柔らかい。そんな次世代のシート型ディスプレーを目指し、ソフトウエアの開発を手がけている。

 2016年設立。3年の構想期間を経て、21年12月、次世代ディスプレーの心臓部となるソフトウエア「SSE(スマート・ストリーミング・エンジン)」を仲間と一緒に完成させた。

 SSEを組み込んだディスプレーは、スマートフォンやPCとワイヤレスで接続し、双方向の画面操作ができる。軽量で低コストな上、ディスプレーに個人情報を残さずにプライバシーを保護する。

 リコー(東京都)に採用され、昨年11月、SSE搭載の製品が初めて世に出た。「最終的には1万円を切るシートディスプレーを届けたい」と力を込める。

■ホワイトゾーン

 小学5年生の時、父親の転勤で大阪から本県に移住した。東北大を卒業後、1984年にシャープに入社。長く矢板工場で新製品企画などを担当した。

 転機は98年。電子書籍の産業化を目指す国の実証実験にシャープの代表者として携わった。実験後、「消費型の本の世界を電子で変えたい」と決意し、2000年に独立。親交のあった大手出版社の編集長と手を組み、電子書籍販売などの「イーブックイニシアティブジャパン」を設立した。

 事業を展開するさなか、スマホより大きな画面で書籍を読むには、選択肢がタブレットしかないことに気づく。この「マーケットのホワイトゾーン(空白地帯)」が、teamSの出発点になった。

■社会貢献目指す

 「ものづくりの楽しさを教えてもらった原点」との思いから、会社の設立日をシャープ創業者早川徳次(はやかわとくじ)の誕生日である11月3日にした。矢板工場の出身者らシャープの元社員が集まり、社名には古巣の頭文字Sを掲げた。

 次世代ディスプレーに携わるなら「要素技術を作った方が社会に貢献できる」と考え、ソフトウエア開発に専念した。国内外約15社に自ら技術を売り込み、コンセプトに共感した企業との製品化を進めている。

 今後、次世代ディスプレーの活躍の場は、教育や医療の現場にも広がると見込んでいる。「世界にないものづくりは楽しい。何より、社会や人々に役立つことが大切だ」

 経歴  大阪市出身。宇都宮高、東北大教育学部卒。シャープに就職し、約16年の勤務期間の大半が矢板工場だった。退職後、2000年5月にイーブックイニシアティブジャパンを共同創業し、常務取締役などを歴任。16年からteamS社長を務める。千葉市在住。

 企業メモ  teamS(チームエス) 2016年11月設立。資本金2億9千万円。開発先行型企業で、22年10月期の売上高は3300万円。社員8人に加え、開発メンバーが10人以上参画する。東京都港区新橋4の21の3。