栃木県内で発掘された昆虫の化石の中で最も古い年代のものとみられるカメムシの仲間の化石が、那須烏山市東部の大木須地区で見つかったことが9日までに分かった。約1800万年前の地層から発掘され、従来の県内最古の発見例より少なくとも800万年さかのぼる。古代の環境や生き物の進化を知る上で貴重な手掛かりという。
県立博物館名誉学芸員で古生物分野を専門とする同市会計年度任用職員(事務員)柏村勇二(かしわむらゆうじ)さん(62)が発見した。
化石は縦約12ミリ、幅約7ミリ。頭、胸、腹の3部分が確認でき昆虫と分かるほか、左右の羽の硬さが異なっているように見える点が、カメムシ類に代表される異翅(いし)亜目の特徴と一致するという。
約1800万年前の中新世前期の地層である元古沢層から発掘された。柏村さんによると、従来の県内最古の昆虫化石は、1969年に那須塩原市百村地区で見つかったセミの化石で、約1千万年前の中新世中期の地層から見つかったとされる。
ただ、中新世中期は本県が海底に沈んでいた時代に当たり、この時代の地層から昆虫化石が見つかることには疑問もあるという。
一方、県内では約30万年前の更新世の地層である那須塩原市中塩原の木の葉化石園で多くの昆虫化石が見つかっている。今回は、この時代から1700万年以上さかのぼる発見例である可能性もある。
県立博物館名誉学芸員で県内の古生物分野の第一人者青島睦治(あおしまむつはる)さん(76)は「県内の昆虫化石の発見例は木の葉化石園にかなり集中しており、他の場所で見つかること自体が貴重。本県側の八溝地域における化石の論文もほとんどないため、今後の調査に大いに期待したい」と話す。
柏村さんは昆虫や植物を含め大木須地区の化石調査を進め、将来的に成果を論文にまとめる考え。
発見は、市民に化石発掘を体験してもらう生涯学習講座の下見中の出来事だった。柏村さんは「1個の化石から踏み込んだ考察は難しい。今後も市民ぐるみで息の長い調査を続けたい」としている。