9回、逆転2点本塁打を放ち、ガッツポーズする作新の武藤=甲子園

 第95回選抜高校野球大会第7日は25日、甲子園球場で2、3回戦3試合を行い、3回戦の作新学院は9-8で英明(香川)を下し、準々決勝に進んだ。

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 九回、甲子園に快音が響く。その瞬間、作新学院の武藤匠海(むとうたくみ)は早くも逆転本塁打を確信し、右手を高々と挙げた。「ボールがつぶれてバットに乗った」。その瞬間がはっきり見えるほど打席に集中していた。

 ネクストサークルから狙いを絞り、内側の真っすぐを捉えた。高校通算9本目。イメージ通りのスイングだった。「一番うれしい。甲子園で打てて格別」と試合後も興奮は冷めなかった。

 力強いハイタッチでベンチに戻ると、前の回に逆転3点本塁打を打たれた磯圭太(いそけいた)が涙ぐんでいる。小針崇宏(こばりたかひろ)監督からは「ナイスバッティング」と迎えられた。「怒られてばかり」という武藤にとって、シンプルながら最高の褒め言葉だった。

 昨秋の県大会は4番に座ったが、不振に陥り期待に応えられず。この冬は徹底的に下半身を鍛え上げ、1日の練習の半分以上を打撃練習に割いた。積み重ねた努力が最高の場面で結果となって表れた。

 最後の打球を処理したのも武藤。「三塁線にくる予感があった。(送球がそれて)ヒヤッとしたが、アウトになって良かった」と頭をかいた。

 この日の安打は本塁打のみの1本で、“満開宣言”とまではいかない。「まだまだ。ここからまた積み上げていきたい」と慢心なく、先を見据えた。