資生堂那須工場(栃木県大田原市中田原)の工場見学がすごいらしい-。そんなうわさを聞き、早速、取材を申し込んだ。今回は、実際に誰でも参加できる同社那須工場見学の魅力をひもといていこうと思う。

資生堂といえば、言わずと知れた大手化粧品メーカー。那須工場は、2019年12月、国内では36年ぶりの新工場として誕生した。「エリクシール」「HAKU(ハク)」などの中高価格帯スキンケア商品が日々この工場で製造され、全国に運ばれていく。

工場見学の入り口は、那須の香りをイメージして作られた上品なアロマオイルの香りに包まれている。美を追究する会社は匂いまでこだわりが光る。

人の肌のキメをイメージした壁を横目に見学のルートを進むと、工場から商品が作られ、出荷されていく様子が壁に描かれた「ベルトコンベヤー」の廊下が出てきた。床には、トリックアートが描かれ、商品の上に乗ったような写真を撮影することができる。

早速、記念で見学の案内をしてくれるアテンドさんをカメラに収めたところで、左手に見えてきたのは排水処理施設。工場で使用した水は、自社基準をクリアしたもののみを河川に戻しているのだという。工場で使用している電気は、水力発電所で作られた「とちぎふるさと電気」を使用しており、環境によいもの作りへの強い思いを感じることができた。

次に案内されたのは、工場のタンクのような形をしたイノベーションシアター。資生堂の歴史やもの作りへのこだわりなどのVTRを視聴し、勉強したところで、生産エリアに入った。

工場では、(1)原材料の受け入れ(2)製造(3)充填(じゅうてん)(4)包装(5)出荷の五つの工程を行っている。見学では、原料を窯に入れて混ぜ、取り出す工程などが見られる。1番大きい窯は180ミリリットルの化粧水、約2・5~3万個分が入るという。思わず見入っていると、見学していることに気づいた工場の人々が手を振ってくれた。

説明を受けている途中、工場の床がピンク色なことに気づき、見学施設担当の岩田久仁子(いわたくにこ)さんに理由を尋ねると「従来の工場の床は無機質な暗い色のイメージですが、化粧品工場であることから、華やかなピンクの床にすることで、明るく、従業員のモチベーションを上げる狙いがあるんです」と教えてくれた。確かに親しみがわくような、明るい雰囲気がある。

製造や工場に関する知識を学んだ後は、ワークショップスタジオに案内された。色とりどりのカラフルな試験管のようなモニュメントがエリアを分けている。中には、紫外線が肌に与える影響を学べるコーナーや、さまざまなメークパターンを自分の顔に重ねてモニターに映し出すことができる機械など、大人でも、子どもでも楽しく学べる工夫があちこちに感じられる。

西田美晴(にしだみはる)工場長は「見学では(作業着姿で)目元しか見えないが、那須工場は若い人が多く、新しいアイデアを出して、いろんなことにもトライしてくれる」とほほ笑み、「みんなで一丸となって高品質な製品を目指しているので、安心して使ってもらえたら」と力を込めた。

最後に、お土産がもらえるガチャガチャを引いて見学は終了した。最後までワクワクが止まらない。期待以上の素晴らしい工場見学だった。