「当時の運用が不適切だった」。重大少年事件の記録廃棄問題で、宇都宮家裁は25日、那須塩原市で1998年に起きた「黒磯北中事件」の記録廃棄と対応の不備を認めた。これまで記録の有無については「不明」としており、最高裁の調査で実態が明らかになった。一方、事件に関わった弁護士からは「資料は唯一無二。廃棄されたら二度と検討、検証できない」などと批判の声が相次いだ。
最高裁の有識者委員会は3月上旬、同家裁の記録保管庫を視察。最高裁は当時の担当職員を聴取するなどした。25日公表の調査報告書によると、同家裁では当時、管理職を含む担当職員らが記録庫の管理や記録の保存と廃棄を行っていた。廃棄目録を作り、保存期間などを確認して管理職から廃棄の決裁を受けていた。
記録の廃棄について同家裁の手嶋(てじま)あさみ所長は「当時の運用が不適切であり、厳粛に受け止めている。今後は適切な運用を確保していきたい」とコメントした。
黒磯北中事件では1999年、女性教諭の遺族が旧黒磯市と生徒の両親に損害賠償を求め提訴した。原告側代理人を務めた県弁護士会の増子孝徳(ましこたかのり)弁護士は「裁判所にとっては多くの事件の一つかもしれないが、資料は唯一無二。廃棄されたら二度と検討、検証できない」と問題視した。
裁判所への事件に対する関心の薄さも指摘した。「重要な資料を独占している裁判所だからこそ、簡単に捨ててもらっては困る。国民やご遺族を失望させることになる」と述べた。
少年審判で少年の付添人を務めた同会の澤田雄二(さわだゆうじ)弁護士は「誠に遺憾。裁判所は保存に関する規定、仕組みを早急に構築してほしい」と求めた。
保存方法についての提案もあった。少年事件などを担当する同会子どもの権利委員会の委員長を務める稲葉幸嗣(いなばこうじ)弁護士は「記録を電子化して一元管理するというような時代に合わせた管理方法を検討、確立してほしい」と話した。