赤色の塗料で矢印が描かれた岩を確認する池田理事長

赤色の塗料が塗られた木

白色の塗料で矢印が描かれた木

赤色の塗料で矢印が描かれた岩を確認する池田理事長 赤色の塗料が塗られた木 白色の塗料で矢印が描かれた木

 宇都宮市北西部に位置する古賀志山(583メートル)の登山道で、赤色のスプレー塗料などで岩や樹木に付けられた不自然なマーキングが相次いで見つかっている。誰がどういう目的で付けたかは分かっていないが、NPO法人「古賀志山を守ろう会」は「環境を損ね、遭難を誘発しかねない」と懸念する。市は同会や日光森林管理署、県警など同山に関係する機関と情報共有を進め、対応を検討する方針だ。

 同会によると、無断のマーキングはこの半年ほどで急増し、把握しているだけで20カ所以上ある。カタクリやアカヤシオを楽しめるルートとして知られる中尾根コースや東稜(とうりょう)コースなどで確認されている。見かねた会員が消した後、上塗りされたケースもあったという。

 17日、同会の池田正夫(いけだまさお)理事長らに同行し、東稜コースを歩いた。山林のルート上で十数カ所のマーキングを発見した。岩に長さ30~50センチの矢印が赤色や白色の塗料で描かれたり、縦横約30センチの大きさで木にべっとりと塗られたりしていた。

 マーキングは一本道にあり、池田理事長は「分岐もない場所。マーキングの必要はないよね」と首をかしげる。別の場所では、ルートを外れていく踏み跡のそばの立ち木にマーキングがあった。「皆が通るルートを外れて勝手に道を作るのはマナー違反。そこに印を残すと他の登山者が誘導され、山岳遭難につながる」と池田理事長は指摘する。

 同山は低山だが、県内の「山のグレーディング」では、技術的難易度が2番目の高さに位置付けられる危険なルートもある山だ。「樹皮の塗料がなくなるまで10年以上かかる。個人の判断で(マーキングすることは)通常あり得ない」。同会メンバーで日本山岳・スポーツクライミング協会自然保護指導員の奈良忠男(ならただお)さん(82)は強調する。

 中尾根、東稜の両コースは国有林に当たる。日光森林管理署の徳川浩一(とくがわこういち)署長は「無秩序にさまざまなサインが設置されてしまうのは混乱の元」と懸念を示し、「入山者が無事に帰ってくるために何ができるのか。対応を関係各所と連携して進めたい」と話す。

 同山での山岳遭難の急増を受け、市や同管理署、県警などの関係機関は「古賀志山ハイキングコースの安全対策に係る連絡会議」を1月に開催し、遭難対策を進めている。県警は「立ち木に悪質なスプレー塗布があった場合、器物損壊などの法令違反に該当する可能性もある。安易な気持ちでやらないでほしい」と注意を促す。

 中尾根コースは市が国から借り受けて整備したコースの一つ。市観光交流課の篠原永知(しのはらながとも)課長は「安全で快適なハイキングの環境づくりを進めている中で残念だ。連絡会議の開催も視野に対応していく」と述べ、ルールづくりや啓発などに取り組む考えを示した。