廃校となった学校も含め佐野市内小中の校歌集をまとめた船田さん

 まちづくり会社の事務局次長などを務める船田実(ふなだみのる)さん(73)=栃木県佐野市仙波町=が、統合され廃校になった学校も含め市内56校の小中学校の校歌を調べ、53校分の歌詞などを冊子にまとめた。多くの譜面が失われ、調査は困難も少なくなかったというが、約8年間の粘り強い取り組みの末に完成へとこぎ着けた。船田さんは「校歌は歌った人々にとってかけがえのない思い出で、大切な古里のレガシーの一つ。後世に残すことができてほっとしている」と笑顔を見せる。

 校歌を調べてみようと思ったのは2015年ごろ。同窓会の際、母校の校歌が、自分の知っている校歌と違っていたのがきっかけだった。調べていくうちに興味が深まり、市内全体に手を広げ、一冊にまとめてみようと考えた。

 戦後市内に存在した学校と、現在ある全ての小中、義務教育学校など56校について調査した。最も苦労したのは楽譜で、統廃合された学校は喪失してしまったケースが少なくなく、あっても不完全で作曲者を探したり直接、卒業生に歌ってもらったりして譜面化した。

 苦難の末に完成した冊子はA4判250ページ。残念ながら、どうしても資料が発見・入手できず、有力な情報もなかった入飛駒地区(現群馬県桐生市)などを除く、53校の校歌の歌詞を掲載している。

 譜面も新旧ほとんどを掲載することができた。学校独自の児童歌や応援歌など21曲も収録している。

 船田さんは「校歌を歌うと、当時の記憶が鮮明によみがえる」と話す。調査の過程で、編曲が行われていた校歌が分かるなど、埋もれていた真実も明らかになった。作られた年代や内容からは時代背景も浮かび上がってくる。

 冊子は市内学校や図書館などに寄贈しており、「市内にある廃校となった校舎などで、校歌だけのミニ・コンサートなどを開いたら面白いのでは」といった反響も出始めている。