新デザインの紙幣発行に伴い、製造が終了している現行紙幣

紙幣製造のイメージ

新デザインの紙幣発行に伴い、製造が終了している現行紙幣 紙幣製造のイメージ

 「ご祝儀などに使う新しい紙幣(ピン札)への交換に対応できず、困っています」。福岡県内の金融機関の窓口担当者から、こんな投稿が西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。新デザインの紙幣発行が2024年7月に始まるのに伴い、現行の紙幣は既に製造が終了。“ピン札”の残りが徐々に少なくなっているようだ。取材を進めると、銀行やホテルで不足の影響が出始めていた。

 「入ってくる新札の量が減り、今後は交換に制限を設けることがあるかもしれません」。取材班が同県内の金融機関の窓口で尋ねてみると、こんな説明が返ってきた。

 日本銀行によると、1年間に製造される紙幣は千円札、5千円札、1万円札を合わせて約30億枚。日銀は過去数カ月の各金融機関の使用実績に応じ、その割当量を決めてきた。約30億枚は毎年ほぼ全量、古い紙幣と交換する形で金融機関に渡り、個人や法人取引を通じて世の中に流通する。

1年9カ月の空白期間

 現行紙幣の製造は22年9月までに終わり、さらに同年度に造られた約30億枚の紙幣の半分は新紙幣だった。新紙幣の発行がスタートするまでの“空白期間”は約1年9カ月となる。

 例年実績からすると、ピン札は日銀を離れて既に金融機関に移っているはずだが、日銀は「既に割り当てを決めている。交換も終了しているかは、その金融機関次第だ」と説明。交換済みの金融機関だと、現行紙幣は手持ち分のみとなっている状況だ。

 西日本シティ銀行(福岡市)では通常、一定の枚数までは無料でピン札への交換(同じ種類のお札)に応じているが、一部店舗ではより少ない枚数に制限。張り紙などで来店客に理解を求めている。福岡信用金庫(同)も4月から、交換の枚数制限を始めた。現在は13店中5店で制限を設けているという。

 結婚披露宴の参列者からピン札への交換を求められることが多いホテルや、お釣りや給与にピン札を使う店舗や企業にも影響が広がっている。

交換「極力受けない」

 宴会場を備える福岡市内のあるホテルは、これまでピン札交換に応じてきたが、今後の不足を見据えて「やむを得ない場合を除いて極力受け付けないよう内部で通知を出した」(担当者)。市内で靴などの修理店を営む井上和英さん(72)はお釣りにピン札を使っているが、いつも利用する金融機関の店舗で交換制限が始まり、別の店舗に行くようになったという。

 コロナ禍が落ち着いても、財布の中身を新しい紙幣や硬貨に全て交換してほしいとの需要もあるといい、そこにピン札不足も見込まれる。投稿者は「この状況を利用者にもっと知ってほしい。店舗で対応できないケースが増えてきそうだ」と訴える。

(西日本新聞)

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