県内で最も古い歴史を持つ宇都宮工業団地。所在地を冠した「平出工業団地」の方が通りがいいかもしれない。県内に数ある工業団地のリーダー格だ。
農業県だった本県では戦後、徐々に工業生産が増加。高度経済成長期の1960年、さらなる工業生産拡大と所得水準の向上を図ろうと、県都の北東部で大規模な団地造成が始まった。
総面積は東京ドーム65個分に当たる304ヘクタール。32億円をかけ、66年に完成した。JR宇都宮駅から約4キロという好立地から、日本信号や三菱製鋼などの大手製造業だけでなく、地場企業が本社を構えたのも特徴だ。
同団地総合管理協会の谷田部正一(やたべしょういち)専務理事は「誘致・分譲、緑化、上下水道などのノウハウが、その後の工業団地に生かされている」と説明する。
バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災…。平成に入ると多くの危機に見舞われたが、そのたびに乗り越えてきた。
令和の今、会員企業は県内最多の122社。全体で約9300人が働き、製造品出荷額は2566億円(2018年12月現在)に上る。近年は物流など第3次産業の立地も目立ち、産業団地としての顔も見せる。
新型コロナウイルス禍が明けても、原材料費の高騰など逆風は続く。同協会の山田敏明(やまだとしあき)理事長は県内産業界をけん引する決意をこう語る。
「前例なき挑戦、聖域なき改革などによる新たな取り組みをビジネスモデルとして、県全体の工業団地に好影響を与えたい」