宇都宮市役所

 独自の児童相談所(児相)の設置に向けて宇都宮市は23日、基本方針を策定することを市議会議員協議会で明らかにした。9月にも外部有識者会議を立ち上げ、候補地の条件や施設の機能、職員体制など基本的な考え方をまとめ、来年6月の策定を目指す。市の児相を巡っては昨年12月、佐藤栄一(さとうえいいち)市長が設置の方向で検討することを初めて表明し、今年7月に県との連携推進会議を開催。基本方針の策定に着手することで、設置への協議が本格化する。

 議員協議会で市長は、市独自の児相設置について「虐待が疑われる子どもへのより速やかな対応や、保健と福祉の権限を持つ中核市の強みを生かした切れ目のない支援が可能になる」と説明。従来の寄り添い型の支援に加えて公権力を伴う介入が可能になるほか、意思決定や情報共有の迅速化が見込まれるとした。

 基本方針の構成案は、設置場所に関わる条件など「候補地の考え方」や、一時保護所の有無を含めた「基本的機能」、「組織・職員体制」など7項目。他都市の事例や市の地域特性を踏まえ、方針決定後に策定する基本計画の指針とする。

 来月設置する外部有識者会議「市児童相談所のあり方検討懇談会」は地方法務局や県警、県児童養護施設等連絡協議会の関係者のほか大学教授、医師、弁護士で構成。計4回の会議で専門的立場の意見を収集する。

 市は基本方針の策定後、設置場所など具体的な内容を盛り込んだ基本計画を策定する。開設時期は未定だが、他都市では検討開始から5~7年程度を要しているとし、「慎重に検討して市民から信頼される施設としたい」とした。

 県内の児相は現在、県の機関で県北と県中央、県南の3カ所にある。市を含む県中央児相の管轄区域人口は、2021年5月現在で約86万人。今年4月に施行された改正児童福祉法は、児相の管轄区域人口を「基本としておおむね50万人以下」としている。

 市内の児童虐待通告件数は21年度586件で、過去10年間の増加率は約1・7倍になっている。