那須町のシンボル、那須御用邸。今年は那須御用邸造営を希望した皇太子時代の昭和天皇が、那須を訪れてから100年の節目の年になる。
昭和天皇は1923(大正12)年、乗馬訓練を目的に那須地域を訪れた。那須温泉にも足を運んだ際、湯本の旅館山楽で昼食を取った。同所から一望できる那須野ケ原の景色を気に入ったことがきっかけとなり、御用邸の設置が決定した。
那須御用邸本邸が完成した26年、昭和天皇は1カ月にわたり滞在し、那須岳(茶臼岳)の山頂まで初めて登った。第2次世界大戦の影響で利用のなかった期間を挟み、戦後に静養が再開した。静養のたびに、県北地域の植物の調査を行い、学者との共同研究の著書「那須の植物誌」など複数を出版している。
著書の中には「那須に来ると、いつも私は自然が生きているように感じる。動物や植物が、いつまでも静穏な環境の中で、その生を営むことができるように祈ってやまない」と、那須への強い思いがうかがえる記述が残る。
そして時は平成へ。天皇在位中の上皇さまのご意向により、御用邸の敷地の一部約560ヘクタールが宮内庁から環境省に移管され、2011年に日光国立公園「那須平成の森」が開園した。令和に入り、今年も天皇、皇后両陛下と長女愛子さまが那須御用邸で静養され、町と皇室の関係は今なお変わらず続いている。
那須歴史探訪館の作間亮哉(さくまかつや)学芸員(30)は「行啓(訪問)から節目の年を迎えていることを知らない人が多く残念。御用邸があることを当たり前に思わず、ロイヤルリゾートと呼ばれている背景を県内外の多くの人に知ってもらいたい」と話す。