県議の海外視察などを賛成多数で可決した県議会=12日午前、県議会本会議場

 県議会は9月通常会議最終日の12日、県議5人をオーストラリアに派遣する議案を提出し、賛成多数で可決した。海外視察は新型コロナなどの影響で5年ぶりとなる。24日から4泊6日の日程で、費用は810万円(県議1人当たり換算で162万円)。物価高で県民生活が厳しさを増す中、一部県議からは「県民の理解を得られない」と反対の声が上がった。海外視察を巡っては以前にも増して厳しい目が向けられており、賛成派県議の中でも見直しの声が出始めている。

 県議会事務局によると、同国視察は19年度に計画していたが、現地の森林火災などで中止した経緯があり4年越しで実施されることになった。具体的なプランの策定は、視察のテーマを提示した上で旅行会社に委託。国家公務員の規定に基づき、飛行機はビジネスクラス、宿泊先にはAクラス以上のホテルを指定したという。

 一方で円安などの影響で旅費は県議会の想定以上に高騰。当初は6泊7日で2都市の視察を予定していたが、日程を短縮し、訪問先はシドニーに絞った。それでも宿泊代は1人1泊5万円以上に跳ね上がり、規定に沿った県負担額(1人1泊1万5100円)との差額分は県議が自費で賄うことになった。

 視察先は自治体国際化協会や日本貿易振興機構(ジェトロ)の現地事務所、英語を母国語としない生徒が学ぶ高校、日本産食品を取り扱う市場など7カ所。帰国後は速やかな報告書提出が義務付けられている。

 参加するのはとちぎ自民党議員会の琴寄昌男(ことよりまさお)、早川桂子(はやかわけいこ)、高山和典(たかやまかずのり)の3氏と民主市民クラブの中屋大(なかやだい)氏、県民クラブの塩田等(しおだひとし)氏。

 視察団団長となる琴寄氏は取材に「勉強会を開くなどして準備してきた。県政発展や政策立案に役立つ調査にしたい」と話す。

 議員の海外視察は地元の課題解決に有効との意見がある一方、費用対効果の面で批判も少なくない。最近では観光旅行を思わせる写真をSNS(交流サイト)に投稿した自民党参院議員や、香川県議団の中南米視察計画が批判を浴びた。

 宇都宮市議会では本年度、物価高などを理由に視察の延期を決めている。県議会で視察に賛成した議員の中にも、年1回とする頻度の妥当性を問う声が上がっており、今後、会派間で今後協議される可能性もある。