内閣府が3月に公表した「男女共同参画社会に関する世論調査」の家庭生活の項目で「男性の方が優遇されている」と答えた割合が年代別で最多の65%となった70歳以上のシニア世代。実態を探るべく、下野新聞社はアンケートを実施した。1回目のテーマは家事。女性に分担が偏っている現状があらためて浮き彫りとなり、「妻が先立った場合の不安」も「家事」が上位となった。家族や自分の将来の安心のため、家庭内の分担を見直したい。
アンケートは9月、宇都宮市の雀宮地区、宝木地区の敬老会に参加した70代以上の高齢者を対象に実施。今回のテーマについては、配偶者がいる110人(男66人、女44人)から回答を得た。
家事の分担を聞いたところ、「妻が毎日」「妻がほとんど」が8割以上(食事作り97%、食器洗い81%、掃除82%、洗濯94%)。現状について男性の90%は「満足」「まあまあ満足」しているが、女性では60%にとどまり、「不満」「まあまあ不満」が27%に上った。
「配偶者が先に亡くなった場合、不安はあるか」の質問には男女ともに9割が「ある」と回答。具体的な不安要素(複数回答)を見ると、女性は「収入が減る」「孤独」(同率47%)が上位で「家事」は3%にとどまったが、男性では「家事」が75%で最多だった。
「自分が先に亡くなった場合、配偶者への心配があるか」の質問には男性の71%、女性の86%が「ある」と回答。具体的な心配事(複数回答)のトップは男性が「孤独」(63%)、女性は「家事」(61%)と違いが出た。
男女ともに「夫の家事」を不安視していることが分かったが、「夫の退職後の家事分担の変化」について聞いたところ、50%は「変わらない」。「妻の負担が増えた」も9%あった。
将来の「もしも」に備えて家事スキルを上げようとする男性は多いとは言えないようだ。
夫婦でリスク共有を 終活サポートワンモア・今井賢司代表
終活セミナーなどを行う終活サポートワンモア(宇都宮市)の今井賢司(いまいけんじ)代表は「夫の家事スキルに不安があることを夫婦双方で認識しているにもかかわらず、改善を図らない、図れないとしたら問題」と訴える。
アンケートでは現状の家事分担に不満を持っていない女性も半数以上いたが、「もしも『昔から何となくやっているから』や『家事は妻がすべきだ』との考えなら、性別役割分担意識やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の影響を受けており、公平とは言いがたい」と指摘する。
今井代表は、女性への家事負担の偏りが女性のキャリアや社会参画に影響を及ぼす可能性を懸念する。長寿社会の今、シニア女性が家事にしばられずにコミュニティーに参加することは、孤独にならないためにも大切な活動だという。
だが長年築いてきた夫婦関係を刷新するのはなかなか難しい。「まずは家事分担を含めて夫婦で老後のリスクを見える化し、共有する。そして、夫婦で起こりえるトラブルへの備え方や今後の生き方を考える。共同で取り組むことで相互理解が深まり、協力体制も整う。これがまさに終活」とアドバイスしている。