高架になっている事故現場の方を見つめる多恵子さん=11月下旬、宇都宮市下栗町

高架になっている事故現場の方を見つめる多恵子さん=11月下旬、宇都宮市下栗町

 10日夜、宇都宮市の自宅で家族と食卓を囲んだ。この日のために集まった子や孫たち。ただ主役となる夫の姿はない。

 テーブルに、バースデーケーキは並ばなかった。好物だった洋酒の効いた「サバラン」。用意しようかと迷ったが、買えずに過ぎた。夫と通った洋菓子店。あの日以降、足が向かない。

 佐々木多恵子(ささきたえこ)さん(59)は2月14日、夫の一匡(かずただ)さん=当時(63)=を失った。同市下栗町の新4号国道で夜、帰宅途中の一匡さんのオートバイに乗用車が追突した。車は時速160キロ超だったとされる。

 「今から帰るよ」。スマートフォンにメールが届いてから数時間、不安を覚えた多恵子さんは外の様子をうかがうため、玄関を開けた。呼び鈴に手を伸ばそうとしていた警察官に、事故を告げられた。