左側は女性が新型コロナ感染後に服用した薬や現在も飲んでいる薬。右側は嗅覚トレーニングに使っているアロマグッズ

 新型コロナウイルス感染症が世界に広がってやがて4年。日本国内では今年5月に法律上の位置付けが変わり、報道される機会も減った。秋以降は1医療機関当たりの感染者数も落ち着きを見せている。ただ、においや味が分かりにくいなどの後遺症(罹患(りかん)後症状)に苦しむ人は今もいる。

 熊本県益城町の60代パート女性は2020年12月に1回目のコロナ感染を経験した。熱は38度弱だったが、においがしなくなり、味も感じにくくなった。夫が飲む芋焼酎のにおいをかいでみたが、分からない。周りに感染者はおらず、まさかとは思ったが県内の病院を受診してコロナだと判明、入院して年を越した。

後遺症外来を受診

 自宅に帰った後も、においや味はしないままだった。「時間がたてば」と思い回復を待ったが、1年以上たっても良くならず、22年夏、新聞で見つけた県内の病院のコロナ後遺症外来を受診。その後、同じ病院の味覚障害の外来に通うようになった。

 味覚障害の原因とされる亜鉛不足を補う薬や、漢方薬も試しながら治療や検査を続けた。今年の春ごろには味覚が少し戻ったように感じたが、夏に3回目となるコロナ感染を経験。再びにおいや味がしなくなった。

 味がしないと食べても十分な満足感を得られない。においが分からないので「自分が嫌なにおいを発していないか」心配になる。3年近く後遺症に悩む女性。薬を服用しながら1日2回、ラベンダーやレモンなどの香りをかぐ嗅覚トレーニングにも取り組んでいるが、「このままずっとにおいも味もない一生を送らなければならないのかと思うと暗い気持ちになる」と話す。

罹患者の10~20%に発症

 厚生労働省によると、コロナの後遺症については22年度に発生頻度や症状、経過などを調べる大規模な住民調査も行われたが、不明な点が多いという。世界保健機関(WHO)はこれまでの研究から、感染者の10~20%に後遺症が発生するとしている。

 コロナの後遺症では益城町の女性のような嗅覚や味覚障害のほか、原因不明の疲労感や倦怠(けんたい)感、関節痛、せき、記憶障害なども知られている。多くは時間の経過とともに改善するが長引く人もいるという。熊本県のホームページでは、後遺症に対応可能な県内の医療機関を保健所別に紹介している。(熊本日日新聞)

■新型コロナの後遺症 WHOは新型コロナウイルス感染症の罹患後症状について、少なくとも2カ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもので、通常は新型コロナの発症から3カ月たった時点でも見られると定義している。後遺症があってもウイルスの排出期間は過ぎているので、他の人に感染させることはない。

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