現状変更許可を申請せず整備事業に着手した琵琶塚古墳。現在は工事を中断している=25日午前、小山市飯塚

 栃木県小山市飯塚の国指定史跡・琵琶塚古墳整備事業で、市が文化庁への現状変更許可申請を行わず工事に着手していたことが25日、市への取材で分かった。実施設計の内容と一部異なる工法で行っていたことも判明。市は20日から工事を中断している。市は近く文化庁に経緯を報告、協議した上で対応策を公表する方針。

 事業は国の補助金を受けて市が2019年度に実施設計を行い、先月着工した。古墳を保護盛土で覆い、芝生を植栽したり埴輪(はにわ)列を復元したりして公園化する計画。27年度完成を目指している。

 国指定史跡で現状変更を伴う工事を行う場合、文化庁への現状変更申請が必要で、許可が下りてからでないと着工できない。今回は、県が市町の本年度事業について許可状況をチェックする中で今月、未申請が分かった。

 市文化振興課の佐久間弘行(さくまひろゆき)課長は「事業を進める中で、過去に出されていると思い込んでいた。大変申し訳ない」と手続きミスを認めた。

 一方、実施設計に伴う工法では、土砂の運搬は人力の小車などを使い、小型重機で整えることになっていた。だが、実際には人力では行わず、古墳の下方に鉄板を敷いてダンプカーや小型重機で運ぶ形とした。

 工法変更について佐久間課長は「安全性や効率性を高めるため、市の判断で行った。古墳に負荷をかけないよう十分配慮している」としつつ、「文化庁や県との協議の中で判断を仰ぎたい」との考えも示した。

 工事を巡っては、交流サイト(SNS)で墳丘に重機が上る写真が掲載され、一部市民から古墳への負荷に関して懸念の声も上がっている。

 琵琶塚古墳は6世紀前半の築造とみられる。墳丘長が124・8メートルあり、県内の古墳で2番目に大きい。