那須雪崩事故は17回の公判を経て29日、結審した。初公判から約1年4カ月。被害者参加し、法廷で審理を見守ってきた遺族は「最大限の求刑を出してくれた」と前向きに受け止めた。「未来の世代への重要な教訓として意味を持つ」「学校安全の礎となる判断を」。被害者論告では遺族の切なる思いも語られた。一方、最終意見陳述で証言台に立った3被告は淡々とした様子で、多くを語らなかった。
変わらぬ悲痛な思い
「禁錮4年が相当」
検察官の言葉に、奥公輝(おくまさき)さん=当時(16)=の父勝(まさる)さん(52)はメモを取る手を止めた。涙をこらえながら天井を見上げた。教諭ら3人の過失を問う中、「厳罰を求めるというこれまでの思いが伝わった」と感じた。
206号法廷では6家族9人の遺族が審理を見守った。論告求刑に、他にもうなずく遺族の姿があった。
「いいかげんな判断で生じた事故」「被害者の無念は察するに余りある」
高瀬淳生(たかせあつき)さん=同(16)=の母晶子(あきこ)さん(57)は時折ハンカチを目元にやった。「生きていたら何をしていただろう」。愛息のことを思い浮かべながら、検察官の言葉を聞いていたという。
結審を前に、被害者論告も行われた。
代理人弁護士は「子を失った親の悲しみは底なしに深い」「家族との未来や時間を返してほしい」などと、遺族の心情を代弁した。
被告の対応を不誠実と感じる憤り、変わらぬ悲痛な思い-。6家族が置かれた状況や胸の内を訴えた。
代理人弁護士は、長野県軽井沢町で2016年に大学生ら15人が死亡したツアーバス転落事故で、運行会社社長らが業務上過失致死傷罪で禁錮刑の実刑判決を受けた事例を引き合いに、実刑判決を求めた。
雪崩事故は今月末、発生から7年となる。閉廷後、奥さんは報道陣の取材に「長かった。ようやくここに至った」と話し、表情をわずかに緩めた。毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん=同(29)=の父辰幸(たつゆき)さん(71)は3か月後の判決に向け、「学校安全の礎となる判断を出してほしい」と願いを口にした。
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