東京株式市場で4日、日経平均株価が史上初めて4万円を突破し、終値は4万109円を付けた。好調な企業業績やデフレ脱却への期待感などが背景にあるとされる中、県内の中小企業にはどのような波及効果があるのか、専門家に聞いた。
中小企業波及は不透明
4万円の大台に初めて突入し、東京商工リサーチ宇都宮支店(宇都宮市大通り2丁目)の松井拓(まついたく)支店長は「思っていた以上に株価の上昇スピードが速い」と驚く一方、県内経済の実態とは「乖離がある」と指摘する。
県内企業の倒産件数は緩やかな増加傾向にある。原材料価格の高騰や新型コロナウイルス禍で政府が進めた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済がピークを迎えていることなどから「体力の乏しい中小・零細企業を中心に倒産が増えている」と分析する。
コスト上昇に対する価格転嫁も十分に進んでいないとみる。同支店の調査では、4割近くの県内企業が原材料や電気代などの高騰分を製品などの価格に転嫁できていなかった。
「受注の減少につながることを恐れ、自社の利益を減らしてコストの増加に対応している」と説明。「大企業を中心とした好調な業績の恩恵が、地方の下請け事業者にまで十分に行き渡っていない」と続けた。
株高が「今後どれほど中小企業に波及するかは不透明」。金利上昇や円安に伴う輸入品の価格高騰は経営のマイナス要素になり得るとして「適切な価格転嫁と利益を生み出すための成長戦略が必要だ」と訴えた。
個人投資に広がりが鍵
とちぎんTT証券(宇都宮市池上町、下山孝治(しもやまこうじ)社長)の加藤幸成(かとうこうせい)営業推進部長は株高の背景について、「いろいろな期待感が合わさった結果だろう」と受け止める。
上場企業の2024年3月期の純利益見通しが前期比13%増と業績が好調に推移することや、春闘の賃上げによる脱デフレ、新NISA(少額投資非課税制度)で個人投資が増えることなどを見込み、投資が活発になっていると指摘。米半導体大手エヌビディアの好業績を背景に関連株を買う動きがあり、また中国経済の低迷で日本株に注目が集まっていることから、「海外マネーの流入が株価を押し上げている」。
ただ半導体関連株に買いが集中しており、日経平均とは銘柄が異なる東証株価指数(TOPIX)はマイナスで推移している。県内経済については「株高の影響は限定的であり、県内企業や家庭で株高を実感することはあまりないのでは」と冷静な見方を示す。
今後、半導体関連以外にも株高が波及するには、新NISAなどによる個人投資の広がりも大きな要因になると指摘する。「貯蓄から投資の動きが広がり企業に資金が回ることで株価が上昇し、個人資産が増え、結果的に消費にもつながるだろう」と強調した。