清少納言(せいしょうなごん)の枕草子は「春は曙(あけぼの)。やうやう白くなりゆく、山際すこし明かりて、紫立ちたる雲の細くたなびきたる」で始まる。感性豊かな名文である▼きょう1日から4月。暖かな陽気が続く県内でもこの日、多くの企業が入社式を行う。小社も新人たちが社会人の第一歩を踏み出す。期待と不安が入り交じる中、新入社員は春の明け方の情景をしみじみ味わう余裕などないかもしれない▼今春入社の新人はかつてない大学生活を余儀なくされた。4年間をコロナ禍の対応に追われ、講義はオンライン、サークル活動も制限された。マスク姿でない素顔を知った途端、卒業を迎えたケースもあるだろう▼民間の調査機関「産労総合研究所」(東京)は、本年度の新入社員の特徴を「デジタルに慣れ親しむ一方、コミュニケーションの経験に乏しい」と分析する。しかし目標が定まれば自分なりに情報を集め選択して歩き始めるとし、注目の少額投資非課税制度にかけて「セレクト上手な新NISAタイプ」と命名した▼「彼らの選択を尊重しながら、いかにサポートし、導いていくかが問われる」。研究所はそう指摘する▼新人はコミュニケーションの機会を増やそう。移ろう季節の中で、たとえ壁にぶつかってもそれは全て糧になる。努力する若者たちを上司や先輩は温かく見守っている。