宇都宮市内のトレーニング施設で12日、競輪選手男性が意識不明となった事故を受け、低圧室を製造するメーカー関係者からは「考えられない事故」との声が聞かれた。現場では何があったのか。
酸素カプセルや低圧室製造のワールドネットインターナショナル(東京都)の担当者は「正しく使っていれば起こりえない」と話す。同社は販売店や店舗に利用者の持病や体調の問診、監視体制を徹底するよう求めている。これまでに製品を巡る事故はないという。
別のメーカー担当者は、低圧室内外の圧力差で扉が開けにくい場合やロックがかかる機械もあると説明。「故障やトラブルがあっても、外に1人いれば対応できる」と指摘した。
酸素が薄い状態になる低圧室。救急科専門医で薬師寺慈恵病院(岡山県)の薬師寺泰匡(やくしじひろまさ)院長は「低酸素が続くとエネルギーを作り出すことができず、脳や心臓など臓器の機能が低下する」と体への影響を解説した。
獨協医大病院臨床工学部の山口剛史(やまぐちたけし)技士長(49)は「気圧を下げている状況だったのであれば、減圧症や急激な気圧の上下による肺胞の損傷などが起き得る」と推測した。
埼玉県ふじみ野市の温泉施設では2014年、健康増進をうたう減圧室の扉が開かず、利用者2人が低酸素窒息による急性循環不全で死亡する事故が起きている。