車いすバスケットボールを体験する宇都宮中央高の生徒たち=2月下旬、宇都宮市若草1丁目

 栃木県内の障害者スポーツの競技団体が若手選手の獲得に苦戦している。車いすバスケットボールのチームでは選手の年齢層が20代から40代中心に移行。聴覚障害者によるデフバレーボールでも「チームが組めない」との声が上がる。本県では2022年10月の全国障害者スポーツ大会(障スポ)開催を機に、障害者スポーツの認知度が高まった。一方、県の調査では若い世代を中心にスポーツや運動をしていない障害者の割合は半数を超える。8月にパリ・パラリンピックの開幕を控える中、関係者は「多くの人に挑戦してもらいたい」と機運醸成に期待する。

 3月下旬、宇都宮市若草1丁目のわかくさアリーナ。車いすバスケットボールチーム「栃木レイカーズ」が競技体験会を開いた。親子ら約10人が参加。競技用車いすに乗ってシュートやドリブルを楽しんだ。レイカーズは2月にも体験会を実施。ただ、いずれも車いすの参加者はいなかった。

 車いすバスケットボールは障害者スポーツの競技の中でも認知度が高い。一方、レイカーズの選手は当初の20代から40代が中心となり若手選手の獲得が課題だ。体験会は誰でも参加できるイベントとして開いており、チームの存在が口コミで広がることを期待する。

 パラリンピック出場経験者の増渕倫巳(ますぶちともみ)選手(47)は「今はeスポーツなど昔に比べて競技の選択肢が多いのでは。定期的に体験会を開き、競技の面白さを広げていきたい」と話した。

 若手選手の獲得には他の競技も悩まされている。

 聴覚障害者による「デフバレーボール」は1チーム6人でプレーする。本県男子チームは選手の大半が40代以上。障スポ後に競技を離れた人もいるという。若原正享(わかはらまさゆき)選手(41)は「チームが組めないほどメンバーが不足している」と明かす。「聴覚障害がある若い人の情報を学校と共有できればいいが、個人情報の観点から難しい。募集は手詰まり状態」と頭を悩ませる。

 県が3月に公表した23年度の障害者生活実態調査によると、回答した10代以下~70代以上のうち、「スポーツや運動を行っているか」の質問に半数超の53・6%が「行っていない」と答えた。理由は「身体など」が38・1%で最も多く、「興味がない」が30・7%で続いた。「興味がない」としたのは17歳以下と18~39歳が多かった。

 パリ・パラリンピックまで130日を切った。県障害者スポーツ協会の小金沢茂(こがねざわしげる)さんは「障害者スポーツの認知度や裾野は間違いなく広がっている。粘り強くPRを継続したい」と話した。