雪崩発生の予見可能性や過失を認め、「相当に重い人災」と非難した宇都宮地裁判決は、講習会責任者や引率教諭の安全対策の欠如を厳しく指弾した。部活動中の事故を巡り、業務上過失致死傷罪に問われた教諭に実刑が言い渡されるのは異例。学校活動中の事故に警鐘を鳴らしたと言える。
地裁は観測データや専門家の証言などから、3被告の雪崩発生の予見可能性を認定。重大な危険を看過し、安全な訓練範囲の設定や周知を怠ったなどの過失を認めた。講習会について「相当に緊張感を欠いたずさんな状況下で漫然と実施された」と強調。極めて基本的かつ重要な安全対策を怠ったと判示した形だ。
背景事情として、本県では雪崩事故が起きたのと同様の登山講習会が慣例として開催されてきたことに触れ、「(都合の悪い情報を過小評価する)正常性バイアスが影響した可能性がある」と言及した。長年の活動の中で、慣れ故にずさんな対応となった実態を浮き彫りにした。また県高校体育連盟登山専門部の山岳部顧問らへの研修が不十分だったことにも触れた。
3被告が怠った注意義務は、通常ならば安全確保のために当然行うことばかりで、難しい要求は何もない。学校活動の現場は命を最優先し、安全であるべき場所だ。悲惨な事故を二度と起こさないために、全国の学校現場で基本的な安全対策の重要性と子どもたちの命を預かっているという責任の再認識が求められている。