1990年に足利市で女児が殺害された「足利事件」と同じDNA型鑑定法が確定判決の有力な証拠となった「飯塚事件」。足利事件ではDNA型再鑑定により、菅家利和(すがやとしかず)さんの再審無罪が導かれた。足利事件の主任弁護人だった佐藤博史(さとうひろし)弁護士(第二東京弁護士会)は「飯塚事件は試料が残されておらず、DNA型の再鑑定ができなかった。それが足利事件との天と地の差となった」と指摘した。

 DNA型鑑定を巡っては、警察庁が1989年に「MCT118型」検査法を導入。足利事件と飯塚事件で鑑定に使われた。ただ、当時の一致の精度は「千人に1・2人」と低かった。

 足利事件では、被害女児の半袖下着に付いた体液の再鑑定で、無期懲役が確定し服役中だった菅家さんではなく、真犯人の存在が明らかとなった。佐藤弁護士は「有力な証拠だったDNA型鑑定が、一転して無罪の証拠となった」と振り返る一方、足利事件で再鑑定ができていなければ「菅家さんは今も刑務所にいて、争っていたのではないか」と話した。

 福岡地裁は5日の決定で、元死刑囚の再審への道を再び閉ざした。佐藤弁護士は「無罪である可能性を残しながら再審を認めないのは明らかに正義に反する」と疑問を呈した。