父の死亡一時金に関する議案の可決を受け、市議に情報発信の強化などを求める女性(手前)=7日午前、那須塩原市役所

 那須塩原市議会で7日、新型コロナウイルスのワクチン接種後に死亡した同市、男性=当時(76)=の死亡一時金約4470万円の給付を盛り込んだ一般会計補正予算案が可決された。男性の長女(53)が、市を通して国の救済制度に申請して約2年3カ月。傍聴席から採決を見守り「認められほっとした」と安堵(あんど)。「父のような事例があることを知ってほしい」と語った。

 男性は2021年7月、2回目のワクチン接種後に体調不良を訴えた。病院で神経疾患の疑いと診断され、「まれにワクチンが原因のこともある」と言われたという。男性は炊事洗濯を自分でこなしていたが、次第に歩行も困難になり、同年10月に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなった。

 長女が救済制度に申請したのは22年3月。病院とのやりとりや煩雑な書類の準備に苦労した経験を踏まえ、県に救済制度の周知などを求める要望書を提出するなどしてきた。

 一方、誹謗中傷を受けることもあり、「辛く苦しい時間だった」。7日は父の写真をかばんに忍ばせ、議会を傍聴した。議案が可決され「ようやく一区切りになる」と涙ぐんだ。

 議会後、那須塩原市の板橋信行(いたばしのぶゆき)保健福祉部長(58)は取材に「制度上、国の認定が降りるまで時間がかかってしまう。一日も早く結果が出るようできる限り工夫したい」と話した。

 県によると、県内では7日までに、死亡一時金10件が認定された。医療費支給なども含めた全体の申請件数は169件で、うち4分の1が「保留または審査前」となっている。

 長女は「結果を待っている人を思うと複雑な気持ち。後遺症で申請手続きが難しい人もいると聞くので、自治体に支援をお願いしたい」と求めた。