栃木県の公衆浴場で子どもの混浴は何歳まで可能なのか。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班(あなとち)」が条例を定める県と、中核市の宇都宮市に確かめると、いずれも2022年1月から、混浴を制限する年齢が「7歳以上」になった。それ以前の「12歳以上」から大幅に引き下げられ、公衆浴場はどう対応してきたのか。現状を調べてみた。
「子どもが溺れる事故の発生など、安全面で心配する人がいるんじゃないか」
県公衆浴場業生活衛生同業組合の理事長を務める「宝湯」(宇都宮市若草1丁目)店主の稲垣佐一(いながきさいち)さん(74)は当初、こんな懸念を抱いた。制限年齢の引き下げを受け、施設では番台付近の張り紙で周知を図るなどして対応してきたという。「成長スピードは子どもそれぞれ。心配もあったが、これまで特に問題は出ていない」と説明する。
当たり前の改正
改正前の本県の混浴制限「12歳以上」は全国で最も高かった。当時、宇都宮市内の別の温浴施設では、女性客を中心に「なぜあんなに大きい子どもを混浴させているのか」といった声が出ていたという。
施設管理の男性担当者(50)は「今思えば当たり前の改正だったと思う」と振り返る。ただ、一気に7歳まで引き下げたのは「あまりに極端」とも感じた。それまで親と一緒に入浴していたのに、急に1人で入らざるを得なくなった子どもが増え、浴場で子どもが関係する事故などが起きることが懸念されたためだ。
対策としてこの施設では従業員の見回り頻度を上げた。また、小学生以下の子どもが利用する際は、必ず大人が館内にいるよう呼びかけている。これまで事故は増えておらず、苦情もほぼないという。
成長度それぞれ
利用者はどう受け止めているのか。
5歳の男児を連れて温浴施設を訪れた女性(34)は「(女湯に)10歳を超えた男の子が入っていたら、(女性客も男児も)お互いに恥ずかしい思いをするのでは」と考えを巡らせる。一方でシングルマザーのため、「2年後には子どもを1人で男湯に入らせることになる、と考えると不安」と打ち明ける。加えて「もし子どもが騒いだりしたら、周りの人から親は何しているのかと思われてしまう」との懸念も口にした。
「もう恥ずかしくて(女湯には)入れない」。そう言い切るのは父親(45)と訪れた8歳の男児。「いつもお父さんと来て男湯に入る」と元気よく語った。
利用者によって状況や反応はまちまち。温浴施設の担当者は「例え同じ年齢でも、身体の大きさや感じ方などそれぞれの成長過程がある」とした上で、「全ての利用者が不自由のない決まりを作るのは難しい」。さらに条例改正から2年半が経過するが、「制限年齢引き下げの認知度が低い」(担当者)。中には7歳以上の子どもを混浴させようとする客もいるという。
この施設では、浴場入り口のポスターや注意事項をまとめたパネル、ホームページ(HP)などで制限年齢の周知に努める。入浴前に、制限年齢を超えていそうな子を見かけたら、従業員が声掛けもしている。担当者は「説明すればみんな理解してくれる。徐々に浸透していけばいい」と話した。